出場したら意地でも打つ。西武栗山が逆転劇への口火を切った。5点を追う3回。押し出し四球で1点を返し、なお2死満塁で初球の外角142キロを振り抜いた。左中間フェンス直撃の3点二塁打。「点差はありましたけど、まだ序盤。いい打球でつなぐことができた。おかわり(中村)もかえしてくれて、いける雰囲気をつくれてよかった」。続く中村の適時打で同点のホームを踏み、同学年コンビで劣勢を吹き飛ばした。

 チーム76試合目の中、この日が45戦目の先発出場。レギュラーの座を確約されてはいないが「深く考えすぎず、その場面での役割だけを考えて打席に立つだけです」。相手投手はプロ1年目の渡辺。経験は浅い。「向こうも一番気を付けますが、打者も気を付けるのが初球」と四球の後の1球目を冷静に、したたかに捉えた。「どんな展開でもあきらめずにつなげば、流れが来る雰囲気が、今年はずっとある」とうなずいた。

 試合前、辻監督は今季の打線の集中力を、日本庭園の「ししおどし」に例えて言った。「水が流れ続ける限り、ししおどしは上を向く。うちの打線も、あきらめない限り、上を向くからね」。その言葉通り、栗山の一打が潮目となり、終盤に6得点を奪ってみせた。力強い山賊たちが“ししおどし”を打ち鳴らし、5連勝を決めた。【佐竹実】