ヤクルトは“勝利の方程式”が崩れ、今季3度目の6連敗を喫した。2-2の7回にセットアッパー中尾が登板も、陽に決勝の適時三塁打を浴びるなど4失点で降板。無失点でしのぎ近藤-石山のトリオで勝機を呼び込む青写真が狂った。

 どうしても勝ちたい一戦だった。静岡は、6月5日に肺がんで死去した元スカウト部長の小田義人氏(享年71)が生まれ育ち、天国へと旅立った場所。青木らの担当スカウトとして発掘した功労者に感謝を伝えようと、午前中に小川監督と小田氏の自宅を訪れたのが、守護神の石山だった。

 社会人のヤマハ時代、担当スカウトとして常に見守ってもらった。12年ドラフト1位で入団。プロ入り後も「調子はどうだ?」と電話で励まされてきた。6年目の今季は守護神として交流戦の最高勝率達成に貢献し、監督推薦で2度目の球宴出場も決定。チームに不可欠な存在に成長した。

 すべては小田氏との縁あってこそだった。最後に会ったのは2年前、沖縄春季キャンプ中だったという。それ以来の“再会”。恩師の写真が飾られた仏壇の前で目を閉じた。「小田さんがいなかったらプロには入れなかった。プロの道をつくってくれた人。ここまでお世話になった人なので『ありがとうございます。これからしっかり結果を出して頑張ります』と伝えました」。感謝の思いと固い決意を恩師に伝え、この一戦に臨んでいた。

 6月29日阪神戦以来の登板は、この日もかなわなかった。「静岡とか関係なくチームのために投げたかった」。守護神としての責任感を口にした石山の姿は、天国の恩師にも頼もしく映ったはずだ。【浜本卓也】