「平成の怪物」が、平成最後の球宴でこだわりの直球勝負に徹した。「2018」第1戦(京セラドーム大阪)で、12年ぶりに選出された全セの中日松坂大輔投手(37)は1回4安打5失点だった。「返り討ちに遭いました」と語った直球勝負にはファンへの思いが込められていた。試合は全パが7-6で勝ち、通算成績を83勝78敗11分けとした。第2戦は今日14日、熊本市のリブワーク藤崎台球場で開催される。

 松坂はわずかに口元を緩めていた。初回2死一、三塁から森友の打球は右翼ポール際に消えた。3ランで計5失点。秋山の先頭打者アーチに始まり、4安打1死球。30球を要して予定していた2イニング目は投げなかった。

 「宣言通り、直球系で勝負にいって、見事に返り討ちに遭いました。真っ向勝負するには難しい球でした。あらためて緩急の大事が分かりました。悔しさというより、パの打者のスイングはすごいなと感じさせられました」

 5失点はしても力勝負の楽しさをあらためて味わった。得意のスライダーを封印。落ちる球も投げなかった。捕手会沢とはカーブも含め全球種のサインを決めていたが、どれだけ打たれようとプランは変えない。そんな中、柳田から137キロで空振り三振を奪った。「気持ち良かったです」と振り返った。

 「びっくりするような数の票を入れていただいた。その期待に応えたいけど、どうやって投げようか、正直悩んでいます」。先発部門で巨人菅野を大きく引き離す、39万4704票。感謝の一方で複雑な気持ちがあった。ファンが思う「松坂像」と現在のスタイルには違いがある。球宴という特別な舞台で「主役」として何を見せるべきか。出した答えは直球勝負だった。

 1カ月ぶりの復帰戦。不安はあった。6月17日の西武戦の試合直前に背中を捻挫し、登板回避。昨年まで3年間ほとんど試合で投げなかった反動が出ている可能性が高かった。新天地の中日で7試合に先発して3勝3敗、防御率2・41。久しぶりのフル回転で体が思わぬ形で悲鳴を上げた。この日、久しぶりの実戦を終えて「投げられたのでよかったんじゃないか。後半戦はしっかりチームの力になりたい」と力強く語った。

 球宴前の復帰もできたが、首脳陣の理解も得て球宴での復帰を目指した。直前には西日本豪雨被害があり、胸を痛めていた。

 「言葉にすると軽く聞こえてしまう気がする。映像を見て、言葉がないです。多くの人が無事であってほしいと心から願っています。球宴では勝ち負けを度外視して、個々の勝負を楽しみます。それを見て、少しでも笑顔になってくれる人がいたらいいですね」

 誰よりも大きな拍手と歓声の中、球宴のマウンドに立った。「平成の怪物」は平成最後の球宴で、あらためて大きな存在感を示した。【柏原誠】