松坂さんを負け投手にするわけにはいかない! 全セのDeNA筒香嘉智外野手(26)が球宴で3年連続となる本塁打を放った。2点を追う3回、全パの山本から同点2ランを左中間に運び、横浜高の先輩松坂の黒星を消した。試合前のホームランダービーでは1回戦で日本ハム中田に9-2で圧勝し、準決勝でオリックス吉田正を14-10で退けて今日14日の決勝に進出。計24発でホームラン・ショーの主役を張った。

 怪物のために、怪物のバットが火を噴いた。3回の第2打席。筒香は狙っていた。オリックス山本は直球勝負。「フルスイングする姿を見てもらえたら」。その言葉通り、150キロを超える直球に何度もフルスイングした。なかなか捉えきれないバットが9球目に牙をむく。左中間スタンドに運ぶ同点2ラン。「最後はしっかり捉えることができました。手応え十分です」。満足の1発だった。

 守る左翼からマウンドで投げる松坂の姿を見つめていた。「あの景色は今日1日を絶対に忘れないくらい幸せな時間でした」。夢にも思わなかった松坂との競演。だが初回に5点を失う立ち上がり。このまま負ければ12年ぶりに球宴の舞台に立った大先輩が、敗戦投手になってしまう。黙っているわけにはいかない。3年連続球宴弾で松坂の黒星を消した。

 球界を代表する怪物打者にも、怪物だと思える存在がいた。18歳で迎えた初めての春季キャンプ。当時横浜(現DeNA)の4番を張った村田修一の姿に目を奪われた。「キャンプ入りしたときは軽く振っている感じだったんだけど、オープン戦にかけてどんどん振っていくのを見て衝撃を受けましたね」。異次元のパワーを目の当たりにし「こんな世界で自分が通用するんかな?」。プロ入り初めて出会った怪物が目標になった。

 だからグラウンドに立つと、子供たちを意識する。豪快な本塁打で野球の魅力を伝えるためだ。試合前のホームランダービーでは計23発で今日14日の決勝進出。「明日もたくさんのファンの皆さん、子供たちが球場に足を運んでくれると思うので、生きる活力だったり、ああいう選手になりたいと思えるプレーをしたい」。筒香は子供たちの怪物であり続ける。【栗田成芳】