全セの巨人菅野智之投手(28)が、プロ入り6年連続となる球宴のマウンドに立った。ファンを喜ばせようと用意していた2つの秘策は不発? に終わったが、2回を無安打無失点に抑えた。試合前に行われた熊本の球児のスピーチに感じ入るなど、後半戦に向けて「野球の底力」を蓄えた。

 外野席を埋めた野球少年たちのために元気を持ってきた。菅野がプレートに両足をそろえる。一呼吸入れてから、大きく振りかぶって第1球を投げた。1回先頭の柳田。こん身の直球は、力みに力んだ打者のバットの芯を外してファウル。2球目も直球で押し込み、二ゴロに打ち取ると、外崎は外角直球を見逃し三振。デスパイネへの初球でバントの構えで揺さぶられ? 四球。山川には秘策の110キロ台のスローボールで揺さぶったつもりが、ストレートの四球。2死二、三塁のピンチを背負うも最後は中村奨を一邪飛でしのいだ。

 ファンを楽しませようと思考を巡らせてきた。プロ入り後6年連続の球宴マウンドで4年連続先発は2回無安打無失点で役目を終えた。「(秘策を)用意してたんですが両方とも不発でしたね。スローボールとクイックです。(スローボールは)秋山さんに投げようと思ってたんですけど、出なかったので一番投げやすそうな山川に投げました。結果、何も意味がなかったですね…」と大満足とはいかなかったもののスタンドのファンは一挙手一投足に酔いしれた。

 試合開始直前に地元の野球少年の代表者があいさつした。支援への感謝を述べ、最後に言った。「全国の皆さん、熊本は元気です!」。菅野は野球人として継続的に社会貢献活動を続けている。だから少年の“直球スピーチ”が心に響いた。「立派なスピーチだった。堂々としていたし、言葉の力強さを感じた。本来は僕たちが元気、勇気を与えないといけない。今日のマウンドは後半戦に向けて僕が元気をもらった。また頑張ろうという気持ちになりました」。無意味なことなどない。真剣勝負とはひと味違ったマウンドにも意味がある。菅野が熊本に元気を届け、熊本から元気をもらった。【為田聡史】

 ▼菅野が球宴でプロ入り6年連続登板。プロ1年目から6年以上続けて登板したのは67~76年江夏(阪神→南海)10年、56~64年秋山(大洋)9年、66~73年鈴木啓(近鉄)8年、70~75年太田(近鉄)6年に次いで5人目。2年目の14年<2>戦だけリリーフで、先発は4年連続5度目。通算5度目の先発は松坂(中日)らに並ぶ10位タイだが、4年連続先発は90~93年野茂(近鉄)以来で2位タイ。池永(西鉄)がマークした5年連続先発の球宴記録へあと1年に迫った。