日本ハム渡辺諒内野手(23)が、ついに大爆発した。ソフトバンク14回戦(札幌ドーム)で、2打席連続本塁打を放った。2回は2年ぶりの1号ソロを左中間席に、3回は決勝の2号2ランをバックスクリーンに運んだ。過去4年間で1本塁打しか打っていなかった13年ドラフト1位が、5年目で初の1試合2アーチをマーク。チームの連敗を止める大仕事を果たした。

 13年ドラフトで外れ外れ外れ1位の大器が、やっと日の目を見た。文句なしのヒーローの座を勝ち取った渡辺は、プロ初のお立ち台で、たどたどしく言葉をつむいだ。「5年目で、この舞台に立つのが初めてなので、今日は本当に勝って良かったです。(2打席連発は)自分自身が一番びっくりしていると思います」。緊張で顔から首にかけて、汗でびっしょりとぬれたが、声援は心地よかった。

 価値の高い、インパクト十分の放物線を2本も描いた。2点を追う2回は150キロ直球をとらえ、左中間へ1号ソロ。同点の3回は、151キロ直球をバックスクリーンへ運ぶ決勝の勝ち越し2号2ランだ。「本当に、どちらも入ってくれたらいいなと思って走っていました」。2本目がスタンドへ着弾した瞬間は、激しくガッツポーズ。三塁側ベンチもお祭り騒ぎで出迎えた。

 プロ入り後は、悔しすぎる道のりを歩んできた。1年目から右踵腓靱帯(じんたい)を断裂するなど、故障に苦しみ、伸び悩んだ。若手を積極起用する日本ハムでも、同世代の石川亮や後輩の清水らに先を越された。他球団でもソフトバンク上林ら同じ年代の選手が、次々と1軍定着を果たしていた。「若い人が活躍するのをテレビで見て、自分自身も札幌で活躍したいと思っていた」。2軍の千葉・鎌ケ谷にある勇翔寮で悔しさは日々たまっていた。誓っていた、1軍本拠地での大暴れを、ついに果たした。

 栗山監督も、渡辺の躍動を待っていた1人だ。「一生懸命やっている人の『しでかせる大きさ』を見せてくれた。ある意味、ナベ(渡辺)で勝った試合。よくやってくれた」と、絶賛した。大阪で嫌な流れに乗りかけたチームも、連敗が止まった。渡辺は「打つ方でアピールしなきゃいけない立場。ホームランバッターじゃないので、これからも思い切って強い打球を打っていきたい」。遅れてきた13年ドラフト1位が、覚醒の予感だ。【木下大輔】

 ◆13年ドラフトVTR 日本ハムは1位指名で5球団が競合した楽天松井、3球団競合の元DeNA柿田、2球団競合の阪神岩貞の3投手の抽選にいずれも敗れ、4度目の指名が内野手の渡辺だった。会議開始から45分後の1位確定となった。