冷静に阪神能見がマウンドへ向かった。2点リードの8回1死二、三塁で代打梶谷がコールされた場面。セットアッパー桑原が走者を出し、火消し役を託された。一打同点のピンチにも「勝負は勝負。でも1点まではOKだから。そういうことも頭の片隅に」と冷静。フルカウントまで粘られたが、最後はフォークで空振り三振に打ち取った。続く桑原も初球で遊飛。スーパー救援で1点もやらず、ホールドを記録。抵抗するDeNA打線の息の根を止めた。

 ピンチをつくった桑原を助けたかった。四球と安打、犠打でピンチをつくった同僚へ「ああいうこともあるでしょうし。クワには去年だいぶ助けてもらっているのでね」と感謝のリリーフ。今季すでに30試合に登板している桑原を傷つけることなく、バトンを守護神ドリスへとつないだ。

 昨オフ、能見は桑原へウイニングショットのフォークを伝授した。生き抜いてきた武器を渡しただけではない。意識、感覚まで教わったことに感謝する桑原へ向け「自分の感覚に合わなければ捨ててもいい」とも言った。幾度となく助けてもらった恩返し。助け合う中継ぎ陣の、一丸の勝利だった。【池本泰尚】