重い空気をかき消す、甲高い打球音だ。阪神福留が先制2ランを右翼スタンドへ放り込んだ。1回1死一塁。ヤクルト先発カラシティーが投じた145キロの直球を完璧にとらえた。集中力を研ぎ澄ませ、初球をガツン。5階席まで一直線で運んだ。表情を変えず、さっそうとベースを1周。「とにかく後ろにつなごうと思った結果が、たまたま良い結果になってくれました」と振り返った。

 「暑いのは嫌いじゃない」と話す41歳の夏男。7月も13試合で打率3割6分2厘と打ちまくり、低調な打線を引っ張り続けた。日頃から若い選手にハッパを掛ける一方「チームが苦しいときに、僕らみたいなベテランが役に立たないと」と言い続ける。

 最下位から巻き返しを狙う一戦で、号砲をならした1発。さらに2打席目でも二塁打。7回2死二、三塁では四球で好機を広げた。にこりともしない表情も、チームへのメッセージだ。試合後は「よかった。疲れた」と笑った。