夏の甲子園100回大会開幕記念、後輩に贈る粘りの5勝目だ。阪神先発の小野泰己投手(24)が5回で122球を要し、6安打7四死球2暴投と苦しんだが要所で踏ん張り1失点。この日開幕した全国高校野球選手権に初出場し、10日の初戦で強豪の日大三(西東京)と戦う母校の折尾愛真(北福岡)に白星のエールを送った。チームは小野の奮闘に応えて連夜の逆転勝ち。3位ヤクルトに1ゲーム差に迫り、さあ8月反攻だ。

 小野が苦しみながらも粘り、踏ん張った。毎回得点圏にランナーを背負い、5回で6安打、7四死球、2暴投の大荒れ。球数は122を要した。それでも許した失点は初回の1点だけ。その奮闘が野手陣の逆転援護を呼び、5勝目をつかんだ。

 「制球が定まらずにいいリズムが作れない中で、守ってくれて、試合をひっくり返してくれた野手の方に感謝しかありません」

 神様ランディ・バースの記録を守った。前日4日の試合でヤクルト山田哲がメッセンジャーから本塁打を放ち、12試合連続打点をマーク。バースの日本記録にあと1と迫られた。3打席対戦して1死球を与えたが、初回と2回のピンチに臆せず真っすぐで攻め込み、2打席連続見逃し三振。記録ストップに一役買った。特に2回に外角いっぱいに148キロを決めての奪三振に「あそこは本当に良い球がいったんじゃないかな」と手応えも完璧だった。

 毎回ピンチを迎える投球でベンチを冷や冷やさせた。勝ったことは事実。金本監督も「今日の小野の出来からすれば、よく勝てたなというのが本音ですね。結果勝てたので。走者を出したけどよく粘ったととらえましょうか」と苦笑いだ。

 後輩たちに勇気を贈る白星だった。母校の折尾愛真が甲子園に初出場。北福岡を制した7月末の夜、恩師の奥野博之監督(48)にお祝いの電話を入れた。「おめでとうございます!」。昨オフのプロ初の契約更改終了時にも「また来年も契約してもらいました」と報告。奥野監督は「彼の謙虚さが(プロでも)うまいこといってるんかなと思います」と見守っている。2年目の今季は開幕ローテ入り。昨季の2勝を大きく上回り5勝を遂げた。支えてもらった人への感謝の気持ちを結果でも表している。

 試合後、甲子園に出場する後輩に向けて「頑張ってほしいです」とエールを送った。初戦は10日、V候補にも挙がる強豪の日大三と対戦する。苦しみながらも粘り、勝利をつかんだ先輩の勇姿は、大きな力になるに違いない。【古財稜明】