会心の一撃が右中間を割った。阪神中谷はグングン加速し、一気に三塁へ滑り込んだ。値千金の同点タイムリー三塁打。安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

 「ホッとしてます。昨日はいい場面で全く打てなかった。今日も(チャンスで)まわってくるのかなと思って。(三塁打で)久々にグラウンドを走ったので、うれしかった」

 1点を追う5回、先頭ロサリオが二塁打で出塁。続く中谷は、0封されてきた石川の122キロチェンジアップを引きつけた。昨秋キャンプから取り組んでいる右方向への長打。「そういう気持ちで打ててよかった」。

 金本監督も「あそこは(右打ちの)サインを出してやった方が、彼の状態を考えればいいという片岡の話で出しました。ナイスでしたね、片岡コーチ。右に強くヒットを打ってくれというサインです」と作戦ズバリに笑顔。鳥谷の内野ゴロの間に勝ち越し点をゲット。中谷が決勝ホームを踏み、2夜連続逆転勝ちに大きく貢献した。

 前日4日は今季最長5時間11分の超ロングゲーム。帰路につく際は、日付が変わり、疲労もたまっていた。だが、それ以上にたまっていたのは悔しさ。中谷はフル出場したが「記憶にない」という1試合6打席凡退。チームが歓喜に沸く中、1人喜べなかった。

 心を晴らすべく、この日は早出練習の1時間前にグラウンドへ。ロサリオが試みていた“ノック打法”を実践。長いバットにうまくボールを乗せて左翼スタンドへ。その後はスローボールにタイミングを合わせて力強く振り切った。「早めに来てコーチの方々からしっかりアドバイスをもらった。一言一言に感謝して、やっていこうという気持ちがあります」。片岡ヘッド兼打撃コーチからは「フォローを大きく、前でボールをさばけるように」と助言をもらい、実践した。チームは大阪で2連勝。明日からは再びロードに出て巨人、DeNAと関東で6連戦。中谷が乗ればチームも乗っていく。【真柴健】