意地のマジック点灯阻止だ! 阪神糸井嘉男外野手(37)が適時打2本を含む今季初の4安打、3打点と大奮闘。首位広島戦を前に「勝つしかない」と燃えていた4番が有言実行で逆転勝ちを導いた。3番福留孝介外野手(41)も激走の適時内野安打&決勝の押し出し四球と、おじさんコンビが大活躍。今日15日も引き分け以下で広島の優勝マジックが点灯する状況が続くが、まだまだセ界の灯は消さない。

 詰まりながらも、勝利を決定づける打球をセンター前に落とした。夏場の超人が止まらない。糸井が今季初の4安打。左にも右にも、コンパクトにさばいた。

 「みんなつないでくれてたんで、なんとかかえしたいなと思って、かえせてよかったです」

 福留が押し出し四球を選んで勝ち越した直後の8回2死満塁。4番が中前に力で押し込んでダメ押しの2者をかえした。「前のバッターがめちゃくちゃいいんで、楽に(打席に)入れてます」。主将福留と脅威の3&4番を形成。金本監督も「福留と一緒で暑い時期にやってくれますし。2人が打ってくれると(打線が)機能します。明日からも頼りにしています」と認めるほど相乗効果は抜群だ。

 5回に福留が猛ダッシュの適時内野安打を放ち、1点を勝ち越した直後の無死一、三塁。主将の執念が乗り移ったかのように踏み込んで右前適時打を放ち、追加点をたたきだした。「孝介さんが全力疾走でつないでくれたので、いい流れの中で打つ事ができました」。右足腓骨(ひこつ)は完治していない。患部に特注レガーズを装着して出場する37歳が、41歳の先輩の全力疾走に燃えた。

 この日の4安打で、8月の月間打率は5割1分6厘まで上昇。蒸し暑い季節がやってきた日本列島でも、超人が冷静にバットコントロールを高めている。さらに広島先発のジョンソンから3安打。これで今季は12打数8安打、打率6割6分7厘と抜群の相性だ。

 好調の秘訣(ひけつ)は試合前のフリー打撃にある。打席に入ると、まずは外角球を左へ強く流す。打球の強弱を確認してから、豪快に引っ張ってスタンドインを連発するスタイル。だからこそ試合でも広角に打ち分けられる。金本監督は「広島相手に、広島にいつもやられている勝ち方というか。マジックが点灯したら、現実として受け止めないといけないけど、だから頑張るのは違うと思う」と優勝マジック点灯を阻んだ勝利をそう表した。

 昨季は甲子園で赤く染まる胴上げを見た。「勝つしかない」。同じ悔しさは味わいたくない。糸井がお立ち台で叫んだ。「僕らはもう、負けられないんで。絶対勝つという気持ちで、明日からも戦っていきます。応援よろしくお願いします!」。可能性がある限り、諦めない。【真柴健】

 ▼糸井の1試合4安打は今季初で、昨年9月10日DeNA戦以来阪神移籍後2度目。4安打以上は日本ハム時代に3度(うち5安打が1度)、オリックスでは5度あり、プロ通算10度目となった。