巨人岡本和真内野手(22)が甲子園で大台に乗せた。阪神戦の5回2死二塁で、小野から4戦連発となる30号2ランを中堅右へ運んだ。22歳シーズンの30号到達は、巨人では王、松井、坂本勇に並ぶ年少記録で、22歳シーズン以下の4戦連発は初めて。偉大な先輩に並ぶペースで量産し、真の長距離砲の称号を手に入れた。浜風が吹く同球場で右打者が逆方向へ運ぶのは至難の業だが、同イニングには坂本勇、ゲレーロも右方向に運び、CS圏を争う4位阪神をねじ伏せた。

岡本の一振りが、勝利の女神をくぎ付けにした。坂本勇の逆転2ランが飛び出した直後の5回2死二塁。阪神小野の直球を捉えると、浜風も味方した。普段は右翼から逆風となる風が、追い風に向きを変えて後押し。上昇気流に乗せ、バックスクリーン右へ30号2ランをぶち込んだ。甲子園で、中堅から右方向に1発を運べる右打者は選ばれし者だけ。「阪神には勝っておかないといけない。来た球をしっかり打とうと思いました」と風格たっぷりに振り返った。

また1つ男を上げた。22歳シーズンでの30本塁打は王、松井、坂本勇に次いで球団4人目。同シーズン以下の4戦連発は球団史上最年少となった。「自分としてはうれしい」と喜んだが「残り試合が少ない。チャンスで1本打てるように」とすぐに引き締めた。

強くて格好いい姿が理想だ。最大の目標は「憧れの選手になること」。小学生の時、部屋に近鉄中村紀洋がフルスイングするポスターを飾った。松井、阿部、村田…。起死回生の1発を放つ大砲が憧れだった。今、4番に座って思う。「多くの人に夢を与えられる仕事につけた。見てくれる人に喜んでもらえるよう、勝利への1本を打てる男になりたい」。勝利につながる本塁打こそ、理想に近づくすべと知っている。

不格好でいい。昨季まで通算わずか1本塁打。2軍暮らしが続く中、田代2軍打撃コーチの言葉がヒントになった。「完璧な当たりだけが本塁打になると、本数は打てない」。DeNA筒香らを指導した名伯楽は、当てる打撃ではなく、振り切る重要性を説いた。岡本は「芯で捉えようとしすぎていた。自分のスイングで、詰まっても押し込むだけの打撃をすればいい」と受け止めた。6月23日ヤクルト戦での13号ソロは詰まりすぎ、手もしびれなかった。それでもフェンスを越える理想の1発だった。

若き主砲が打てば19勝10敗1分けと大きく勝ち越す。「明日も勝てるように頑張りたい」。勝負の終盤戦。勝利の女神も、老若男女も見とれる、勝利のアーチをかけ続ける。【島根純】