巨人キラーぶりは健在だった。ヤクルト小川泰弘投手(28)が巨人を8回6安打1失点に抑え、今季7勝目を挙げた。球団では川崎憲次郎らに並び史上5人目となる巨人戦7連勝。クライマックスシリーズ進出を争う直接のライバルをたたき、チームの勝率を5割に戻した。

思わずほえた。3点勝ち越した直後の8回2死一、二塁。小川は7球目の145キロ直球で、代打阿部のバットに空を切らせた。普段、感情をあらわにしない男が響かせた気合の咆哮(ほうこう)。「あそこは絶対に出し切らないといけないところ。フルカウントの苦しい投球になりましたけど、何とか抑えられてよかった」とマウンドから一転、静かにうなずいた。

1ゲーム差で迎えた3位巨人戦。順位の行方を左右しかねないカード初戦を前に、高ぶりを感じていた。「大事な時期に、この順位で戦えているのはやりがいがある。毎試合、意味のあるものになっている。チームに勢いをつける投球をしたい」。

その決意をボールに込めた。「緊張していた」という1回。1死一、三塁のピンチを迎えるも、後続を真っ向勝負で抑え込んだ。4番岡本は2球目に145キロで内角をえぐり、最後は外角低めのカットボールで空振り三振。続く亀井は146キロで詰まらせて左飛に封じ、波に乗った。

決意は球速にも表れた。2回先頭のゲレーロを見逃し三振に切った外角直球は150キロをマーク。前日10日に「150とか、なかなか出ないですけど…。でも明日は150出します!」と“予告”していた。「まあまあ走っていた」と淡々と振り返ったが、自己最速まであと1キロと迫る1球で、チームを鼓舞した。

今季最長の8回を1失点に抑え、巨人戦は自身7連勝。キラーぶりを見せつけた。「プロ入りする前から対戦したいチームはジャイアンツ。そういうのもあって負けたくない気持ちが強い。それが、こういう結果になっていると思う」と振り返る129球だった。

3位とのゲーム差を2に広げ、チームは勝率5割に復帰。「1球1球がチームの成績を左右する。自分の役割をさらに果たせるように、チームを支えられるように頑張っていきたい」と引き締めた。残り20試合、全て正念場。覚悟を持って、腕を振る。【佐竹実】