DeNA筒香嘉智外野手(26)が、2試合連続惜別弾で本塁打王争い単独トップに立った。本拠地最終戦に行われたG後藤武敏内野手(38)の引退試合の1回、37号先制3ランを放った。前日の加賀繁投手に続く惜別の1発で、広島丸を抜き単独トップ。これが決勝打となってチームを4連勝に導いた。3位巨人とゲーム差なしで肉薄したまま、CS出場をかけ、今日から広島3連戦に臨む。

別れに涙はいらない。惜別弾は筒香にしかできない。初回の第1打席。初球を振り抜き、秋空を抜け左中間スタンドへ飛んでいく打球を見上げた。本塁打王争い単独トップに立つ37号先制3ラン。V打となって4連勝でG後藤の引退に花を添え「本当にゴメスさんが引退する試合で打つことができて、試合も勝って終えることができてよかった」と送り出した。

引退セレモニーで8度舞った胴上げでは、横浜高の後輩の1人として石川、乙坂、倉本、そして中日松坂と一緒に持ち上げた。「キャプテンとしても、選手としても、いろんなアドバイスをいただいた。寂しいというか心細い気持ち」。頼りにしていた先輩の1人だった。

主将1年目の15年、敵地中日戦でスタッフに「部屋を取ってもらえますか」とお願いした。チーム宿舎の一室に野手を集め、ホワイトボードにペンを走らせた。“議題”は「人気球団として確固たる地位を確立するためには?」。例えば「ファンが球場の前でユニホームを着替えず、家を出てから帰るまでずっと着るためには」。「巨人という伝統球団と比べDeNAは」という視点まで。選手目線で考え、共有した。当時、まだ23歳。多くの年上選手に勇気がいる行動だった。そういうとき背中を押してくれたのがG後藤だった。

ホーム最終戦で球団初の入場者200万人を突破。思い描いた景色が現実のものとなったが結果は違う。「恩返しの(リーグ)優勝はかなえられないが、でも何としても、またここで試合がしたい。2位でCSなのか、それとも日本シリーズなのか。チャンスは2回ある」。約束を果たすため、残された敵地12戦を戦い抜く。【栗田成芳】