今季限りで引退するオリックス小谷野栄一内野手(37)が9回、代打で登場した。終盤から代打の準備を始め、9回にベンチ前に出た小谷野はすでに目を赤く潤ませ、何度も涙をぬぐった。2死走者なしで最後の打席に立ち、森の初球真っすぐにヘルメットがずれるほどのスイング。2ストライクからの3球目、家族が見守る前で遊ゴロに倒れ、今季のチーム最後の打者になった。

この日の京セラドーム大阪は、小谷野一色。練習開始前、選手やチームスタッフ全員が小谷野のTシャツ姿で記念撮影。福良監督も同じシャツ姿で、退任会見に臨んだ。ロッカー前の通路は、阪神藤川、ソフトバンク和田、楽天平石監督代行ら松坂世代の同期生から届いた花で埋めつくされた。スタンドは3万5775人のファンで埋まり、イニングごとにスクリーンに小谷野の勇姿が映し出された。

そんなスタンドを眺めながらのあいさつで、小谷野は「プロ初ヒットがオリックス戦で、この日と同じ10月5日。ファイターズ、オリックスとは深い縁がありました」と03年10月5日を思い起こした。三塁側、左翼スタンドのソフトバンクファンにも「明日はソフトバンクのポンちゃん(本多)の引退試合なので、最高の試合にしてあげて下さい」と配慮を忘れなかった。最後は恩師の福良監督、夫人と子どもたち、T-岡田から花束を贈られた。

小谷野の最終打席を見つめる福良監督も泣いていた。「本当によく頑張ってくれた。もうちょっと(現役生活を)やらせてあげたかった」と言うと、また目を潤ませた。監督として最後の試合後の会見は、小谷野へのねぎらいで終わった。