名将が帰ってくる-。巨人は10日、都内の球団事務所で前監督の原辰徳氏(60)に来季の監督就任を要請した。リーグ優勝7度、日本一3度の実績を誇る当代随一の指揮官は受諾へ前向きな姿勢を示し、第3次原政権発足が決定的になった。山口寿一オーナー(61)からは編成面での旗振り役として期待も受け、全権監督を担うことになる。25日のドラフト会議にも現在の職責である特別顧問として出席する予定。シーズン終了を待って正式に契約し、名門復権へ原ジャイアンツが船出する。

原氏の頭上には“日本一”が輝いていた。15年を最後に巨人監督から離れていた。この日、山口オーナーから来季の監督就任の要請を受けた。読売新聞東京本社の玄関前にある画家横山大観の「霊峰富士」の絵画の前で胸中を問われた。前日9日に今季限りで退任する高橋監督が2年ぶりのCS進出を執念で決めた。現場への配慮を示し、3度、日本一の頂を踏破した名将は言葉の行間に思いをにじませた。

原氏 正式に要請を受けさせていただいた。今、言えることは由伸ジャイアンツの戦いが残っている。昨日も非常にいい勝ち方をし、監督と電話で話をした。全力で残りの試合を戦っていただき、今日の話の中で前向きに考えます、ということは申し上げるが、正式には全日程の最後まで戦い抜いた後にお話ししたい。

ポストシーズン終了を待ち、正式契約し、会見を行う。山口オーナーは「難しい状況で実績、経験豊富な原さんに託した。どう勝てるチームにするか、知り尽くしている」と再々登板理由を説明した。球団史上ワーストタイとなる4年連続V逸と再建は容易ではない。「ある程度の年数は必要。2、ないし3年」と正式ではないがスパンも明かした。近年、フロントが主導していた編成戦略にも課題を感じており、鹿取GMも含め体制の見直しをすでに明言している。その中で原氏に「フロントとチームが一体となって立て直しが必要だと思っている。原さんにはそうした役割を期待している」と先導を託す。

“全権監督”としての始動はドラフト会議。現状では現在の肩書である特別顧問として出席する。巨人は目玉である大阪桐蔭・根尾昂内野手(3年)を「ポスト坂本勇」として1位指名の筆頭候補に挙げている。慎重な言動に終始した原氏も球団の将来を左右する会議には言葉も熱を帯びた。「来季という部分でのスタートはドラフト、というのはいつも感じている。非常に大事なもの」。根尾は中日が1位指名を公表し、楽天も筆頭候補。その他の球団も1位候補としており、競合が予想される。抽選のクジ役には「どうでしょうか?」と笑顔で含みを持たせた。原氏が巨人の中枢に帰ってくる。【広重竜太郎】

◆監督の再々登板 原監督は3度目の指揮となる。代理、代行を除き、同一球団を3度指揮した例では天知俊一監督(中日)吉田義男監督(阪神)があり、巨人では球団史上初。