FA戦線で阪神がソフトバンクに勝ったのは画期的だ。西勇輝投手(28)からすれば同じ関西のチームへの移籍で生活環境を維持できる面は大きかった。さらに好投手の多いソフトバンクと比べ活躍の機会が多い、と考えるのも当然。さまざまな要素が有利に働いた。

新天地で西が好成績を残せるかどうか。過去の例を見れば、それほど楽観的でもない。かつて「最後は阪神」という考えがあった。実力はあっても人気に劣る阪急、オリックスの選手からすれば、勝てないのに人気の阪神は複雑な存在。引退までに大観衆の前でプレーしたいという思いを口にする選手は存在した。

石嶺、山沖、星野、日高、さらには現役の糸井とそのルートで移籍し、阪神でキャリアハイを残した選手はまだいない。チームで自身で積み上げた相手データは重要。リーグを移るのは勝負だ。そして甲子園球場を中心にした虎党、あるいはメディアから受ける圧力は比較にならない。

過去のケースに比べ、西が有利なのは28歳と若い点だ。ここは大きく期待できる。投手以上に打線に課題がある阪神だけに援護をもらえるかどうかもポイントになる。「オリックス-阪神」の移籍で初の大成功例になるのを虎党は待っているのだが…。【編集委員・高原寿夫】