あるぞ西で開幕! 阪神矢野燿大監督(50)が7日、FA移籍を決断した西勇輝投手(28)を開幕投手候補に挙げた。交渉に出馬して口説き落とした指揮官は、来年3月29日のヤクルト戦(京セラドーム大阪)の候補と期待。阪神では00年星野伸之以来となる移籍選手の開幕大役に浮上した。先発陣の整備が急務の中、4球団争奪戦を制して鮮やかに補強第1弾を決めた。来季逆襲へ幸先良しだ。

約1時間の「ダメ押し交渉」。初めて直接出馬した矢野監督の言葉に飾りはなかった。ぶつけたのは信条とする自身の思いだった。「僕がずっと言ってるようにファンを喜ばせたいという中で、西が入ってくれて、そこに近づいていけると思う。一緒にファンを喜ばせたいということを伝えた」。その殺し文句でハートを射抜いた。矢野監督にとって1日遅れの50歳バースデープレゼントは、先発の柱と期待できる通算74勝右腕の補強第1弾だった。

4年連続開幕投手を務めるメッセンジャーですら、白紙としている来季の開幕投手候補にも挙げた。指揮官は「西がFAで来てくれた。じゃあ開幕投手任せますとは思っていない」とこれまでの競争原理にブレはないが、「もちろん候補には十分なっていく」と断言。3月29日のヤクルト戦、古巣の京セラドーム大阪でツバメ退治に挑む可能性が浮上した。西は今季、オリックスで自身初の開幕投手を務めたが、「そこ目指してやってくれたら、みんなにとっていいと思う」と相乗効果にも期待大だ。

今季の阪神は01年以来、17年ぶりの最下位に沈み、先発投手陣の駒不足も露呈。唯一の規定投球回到達者だった37歳メッセンジャーも11勝を挙げたが、終盤にはコンディショニング不良で一時離脱するなど不安を残した。5度の2桁勝利など、安定感抜群の右腕がいれば計算も立つ。28歳という若さに明るい性格。「若手にもいい手本になるような投手だと思う」という指揮官の言葉もうなずける。ベテラン、若手との橋渡し役としても適任だ。

「クレバー」「総合的に隙のない投手」と実力を評した西とは、3年前に縁があった。15年の「プレミア12」でコーチと選手という立場で同じ侍ジャパンのユニホームを着た。「まずは自分がどんどん勝つ。勝つようにやってもらえれば。西らしい小気味いいピッチングをしてもらえればいい」。特長を知る投手だからこそ期待値は高い。4球団争奪戦を制して逆襲の使者をゲット。最下位からの優勝へ、矢野監督にも一層気合いが入った。【桝井聡】

▼移籍1年目選手の開幕投手 阪神では、99年にオリックスからFA移籍した星野が、00年に務めている。星野は横浜での横浜(現DeNA)戦に先発したが、2回5失点でKOされた(勝敗つかず)。87年に新入団のキーオが投げているが、阪神では星野以外に移籍1年目に開幕投手を務めた例はない。他球団では、西武からダイエー(現ソフトバンク)に移籍した工藤が95年に投げた例がある。