オリックスから阪神にFA移籍した西勇輝投手(28)の入団会見が14日に大阪市内で行われました。虎党の期待を背負う通算74勝右腕を取材してきた歴代担当記者がその素顔を披露します。

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カメラのレンズを向ければいつも笑顔になる。そんな高校球児だった。西を初めて取材したのは、母校・菰野が夏の甲子園に出場した08年。高校3年生の時だった。当時、東海地区の高校野球担当だった私は、菰野に何度か通った。近鉄名古屋駅から四日市駅まで行き、湯の山線に乗り換えて菰野駅へ。練習時間帯に学校のグラウンドに到着すると、西はいつも手を振って迎えてくれた。

決して体は大きくない。驚くような剛速球を投げるわけでもない。ただ、フィールディングなどのセンスは抜群。何よりもコントロールがすごい。きれいなフォームから投げるボールは、次々と捕手の構えたミットに吸い込まれた。

驚いたのはブルペンのホームベース上に置かれたパイプ椅子だ。背もたれと座面の間を通して捕手のミットに投げる-。恩師である菰野・戸田直光監督(56)が「それ絶対、当たるやろ!」と言っても「絶対に当たりません!」と自信満々。その言葉通り、数十センチの間を見事に通してみせた。

高校時代の走り込みで下半身を強化。もともとナチュラルにシュートしていたボールも、高校3年の時には意図的に操るようになっていた。右打者にはシュートで追い込んで、アウトコースのフォーク、スライダーで空振り三振を奪う。自由自在のボールで打者を翻弄(ほんろう)するスタイルは高校時代から変わっていない。

今年はオリックス担当として10年ぶりに西と再会した。縁あってか12月から阪神担当を拝命した。当時高校生だった西に、冗談半分でこんなお願いをしたことがある。「年俸5000万円を超えるプロ野球選手になったら、食事をごちそうしてよ!」。そんなことを言った自分が今では恥ずかしい。【阪神担当=桝井聡】