屋外では冷たい風が吹いていたものの、話が進むにつれ、松井秀喜氏の口調はいつしか熱気を帯びていた。ニューヨーク州マンハッタンに街路樹の落ち葉が舞う晩冬。同氏が取材場所に指定したのは、中心街から少し離れた一角にたたずむ、シャレたイタリアン・レストランだった。生ハムや薄い生地のピザを口に運びながら、松井氏は真剣に言葉をつないだ。

巨人からドラフト指名を受けて以来、松井氏とは、これまで日米両国の球場内外で数え切れないほど接してきた。ただ、意外なことに、2012年の引退にいたるまでの経緯、心境などのテーマは、あまり触れる機会が少なかった。

「平成」というひとつの時代が終わる今回、あらためて現役終盤のプレー、当時の環境、さらに理想の指導者像、球界への思いなどを聞いた。時代の移ろいとともに、野球のスタイル、戦術、戦略も変化し、ルールの改正も少なくない。だが、松井氏の根幹は、現役時代から変わっていない。過去の歴史、先人の功績を受け継ぎ、新しい時代へ継承していくことの重要さを、ひときわ熱く、繰り返し語った。

現役時代に比べると、確かに食べる量は少なくなった。特別、太らないように気を付けているわけではなさそうだが、デザートにも手を出さなかった。

近い将来、ユニホーム姿でグラウンドに立つ際、肥満気味というわけにはいかないから…と、勝手に松井氏の胸中を想像しながら、その大きな背中を見送った。【MLB担当=四竈衛】