【スコッツデール(米アリゾナ州)30日(日本時間31日)=木下大輔、田中彩友美】期待の新戦力、日本ハム金子弌大(ちひろ)投手(35)が、思わぬ熱視線を浴びた。米アリゾナでの自主トレで初めてブルペン入りすると、栗山英樹監督(57)ら首脳陣のほか、チームメートたちも集結。異様な状況に、通算120勝右腕も久しく味わっていなかった極度の緊張感に襲われた。

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金子がマウンドへ向かうと、ブルペンの周囲には人だかりができた。栗山監督ら首脳陣、秋吉ら投手陣も複数名が大集結。金子の一挙手一投足に無数の熱視線が送られていた。捕手を立たせて25球。異様な雰囲気に力が入った。「こんなに緊張するブルペンは久しぶり。足がつりそうになりました。いいところを見せないとという…欲というか、それで緊張しました。全然楽しめなかった。内容もよくなかった」と苦笑いで振り返った。

ブルペン投球は、もともと重要視していない。実戦で結果を残すためのプロセスとして「ブルペンでの状態は気にしていない。自分の感覚で投げられているかを重視している」という。ただ、この日のブルペンでは大事にしている自分の感覚すら「それどころではなかった」。投手陣最年長。背負う期待、後輩投手からの意欲的な視線…。応えようとするピュアな思いが、思わぬド緊張ブルペンにつながったようだ。

熱視線を送った1人の栗山監督は、うれしそうだった。「今まで抑えられる敵として見てきたけど、やっぱ投げるのがうまいなぁと感じた」。再起を新天地へ求めた金子の覚悟も伝わっていた。「環境を変えてもう1回、何とかするんだという気持ちが、緊張に表れていると思う。それがチヒロのいいところ」と言って、うなずいた。

チームの雰囲気にも少しずつ溶け込んでいる。この日はウオーミングアップ中に、金子から清宮へ話しかけた。「トレーニング方法が僕と一緒だったので『どこで、聞いたの?』とか、そんな感じです」。声をかけられた清宮も「体幹トレーニングのことについて話しました。たくさんの知識もあって、長く活躍している方」と喜んだ。

実戦初登板は未定だが、アリゾナでチームは2試合を予定している。「周りがそういう雰囲気になってくると、自然と打者へ対しての意識も上がっていく。実戦の時期も、そうなっていくと、だんだん分かってくると思います」。緊張感が消え、気持ちと体が準備できれば、さらに注目を浴びるマウンドへ向かうことになりそうだ。

<日本ハム過去の主な移籍組始動>

◆稲葉篤紀(05年) FAでのメジャー移籍を目指していたが断念。日本ハムと契約し、名護キャンプ途中での合流となった。沖縄入り即入団会見を行うと、午後5時過ぎから球場でランニングなどをこなした。「日本ハムの稲葉としてアピールしていく。早く実戦で結果を出さないとね」

◆二岡智宏(09年) 巨人からトレード移籍。キャンプ初日からフリー打撃、守備練習など精力的にこなしたが、右ふくらはぎに不安を抱えていたため、練習途中で球団から強制的にストップがかけられた。「まだ動き始めだし、仕方ない部分もある。(日本ハムのユニホームは)変な違和感はなかった」

◆木佐貫洋(13年) オリックスからトレード移籍。キャンプ初日にブルペン入りし、オール直球で50球。「背番号が29なので“肉食系”って書いておいてください」

◆大田泰示(17年) 巨人からトレード移籍。金子と同じくアリゾナでの合同自主トレに参加し、フリー打撃で柵越え連発。夜には杉谷、鍵谷ら同学年組と食事に出掛けた。「しっかりコミュニケーションを取って、チームメートとして認められたいので」