矢野色たっぷりの球春到来だ。阪神は1日、沖縄・宜野座でキャンプイン。矢野燿大監督(50)が初日から「イズム」を全開させた。注目の新外国人マルテらの打撃練習は見ず、投手陣のブルペン投球を1時間20分チェック。果たしてその心は…。日刊スポーツは今回の阪神キャンプで「密着」と題し、ナインらの取り組みを随時取り上げる。第1回は最下位からの優勝を目指す矢野監督に迫った。

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新指揮官の「意思」が浮き彫りになったのは正午前だった。宜野座のメイン球場を離れて新設された屋外ブルペンへ。西や桑原らが投げる姿を見続けた。投手が順番に投球練習を始め、熱視線を送り続けた。注目の新助っ人マルテがランチ打撃を行う時間帯になっても、まったく動かない。実に1時間20分、投手陣の力投をチェックし続けた。キャンプ初指導で、何より際立ったアクションだった。

昨年10月中旬の就任会見で「理想は点を取りたい」と話し、攻撃型野球を打ち出したが、この日は堅実さものぞかせた。「自分もポジションが捕手だったのでバッテリーはすごく大事。今年、ウチが勝つというなかで、この投手陣が力を発揮するのが(比重で)大きくなると思うので、早く見たいなと」と胸中を吐露。昨季最下位からの巻き返しを図る上で、投手陣の奮闘をキーポイントに挙げた。

ブルペンでの立ち居振る舞いも「矢野流」だった。マウンドに向かい、投げる投手の真横で頻繁に助言。伊藤和や飯田らと話し、桑原にも「自分で考えてやっていってくれ」と声を掛けた。今季19年目の片山ブルペン捕手も「あまりないですよね」と話すなど、近年の指揮官が捕手後方からチェックした一般的な光景と一線を画すスタイルだ。矢野監督は意図を明かした。

「しゃべりやすいから。『和雄どうや?』とか。捕手の後ろは球筋も見えるけど、相手の気持ちを聞くとか、話すというのがなかなかできにくい。あっちに行っていたら、投げたときに『どうやって投げた』とか『いま、状態、どうや』とか、話しやすいなと」

03、05年優勝に導いた司令塔らしい持ち味だろう。この日は総勢16人がブルペンで投球。「頼もしかったよ」と声をはずませた。

今春は、自主性を重んじる。読谷村の宿舎出発時間は今年から自ら決めるルールを導入した。藤川や西ら実力者も午前7時台の早朝便に乗り込んで球場入り。そして、練習を終えた投手は若手まで早々に球場を後にした。指揮官は「自分でやっていくからこそプロ」と唱え続ける。矢野イズムが色濃く出た初日だった。【酒井俊作】