今秋ドラフト候補の宮崎産業経営大・杉尾剛史投手(宮崎日大)が24日、宮崎市内の同大球場で行われた中大とのオープン戦で今季初登板した。

雨天の中、8回表の1イニングを投げ、打者4人に対し被安打1、内野ゴロ3個。全8球で直球以外にはカーブ、スライダーを試しフィールディングでもキレのある動きを披露。総合力を備えた実力通りの落ち着いた振る舞いを見せた。

中大の打者が、杉尾に食らい付いてきた。だんだん減りつつあるワインドアップで先頭打者に1球目を投じる。ピッチャー前にバントで転がしてきた。雨でマウンド付近はぬかるんでいることを頭に入れた抜け目ないアイデアだったが、杉尾の反応は速かった。「フィールディングは得意です」。捕球から送球まで、流れるような動きで確実にさばいた。

続く打者には初球カーブでボール。2球目もややコースをずらしてカーブを続け、思わず手を出した打者はサードゴロ。打ち気にはやる打者心理を逆手に取るような配球だった。「初球のカーブは見てくると思ってました。2球目も続けて、どう反応するかな、と思って投げました」。同じカーブも、これまでよりも握りに工夫を加えている分、腕の振りがストレートとほぼ変わらないまでに振れるようになったという。そうした自信が、2球続けることで、打者の反応を見られるまでの落ち着きにつながっている。

続く打者はストレートを続けて1-1の平行カウントからスライダーが抜け切らずに甘く入り中前にヒットを許す。「今はスライダーは2種類投げています。カウントを取るスライダーと、抑えるボールとして投げるスライダーです。打たれたボールは少し抜けました」。

2死一塁となり、最後の打者は2球続けてストレートを投げ、ショートゴロに仕留めて全8球で中大の攻撃を封じた。「僕は身長がないので、球速で勝負するタイプじゃないと思っています。だから、細かい制球や、カウントを取れる変化球の質を求めています。ワインドアップを試しているのも、いろいろ工夫をしている一環です」。

常に同世代の投手の映像を分析し、自分に取り入れるべきヒントはないかと探っている。同じくワインドアップで投げる楽天岸の配球を現在は研究中。「自分で考えて、チームメートにいろいろ相談しながらやっています」。最速は大学2年に計測した147キロ。確かにプロではアベレージの速さだが、それを自覚しているからこそ、配球や、打者を観察することで、打開策を見いだしていこうとしている。

高3夏の甲子園では初戦敗退しており、その時の悔しさが地元宮崎の大学進学につながっている。「他の大学からも誘っていただきましたが、地元で頑張ろうと思いました。あの時の悔しさを晴らして、応援してくださる宮崎の皆さんに結果で応えたいです」。宮崎県をかたどったデザインをグラブに施してあり、県出身としての誇りを大切にしている。

派手に映る160キロの剛速球はないが、打者を打ち取るため冷静に組み立てたピッチングが持ち味と言える。三輪正和監督は「地方の大学ですが、こうした素材もいるということを、ぜひ多くの野球ファンの方に知ってもらいたいです」と大きな期待を寄せる。昨春の大学野球選手権大会、創価大との1回戦では8回を4安打10三振の2失点に抑え、ベスト8進出の原動力となった。その能力は大学最終学年を迎える集大成のシーズンで、もう一皮むけそうな兆しがある。【井上眞】