ソフトバンクがオリックスに快勝し、08年以来11年ぶりに開幕5連勝(1分け挟む)を飾った。先発武田翔太投手(26)が7回2/3を投げ、5安打無失点で今季初勝利。開幕ローテーション最後の出番で、先発6人もうち最長イニングを投げる頼もしさを見せた。12球団でソフトバンクだけが負け知らず。今季のスローガン「奪Sh!」の通り開幕ダッシュに成功した。

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経験豊富な武田が緊張していた。「そりゃ、緊張しましたよ。だいぶ待ったから。みんないい投球をしていたから、その流れに乗りたかった」。開幕から5戦負けなしで回ってきたマウンドで、負けるわけにはいかないプレッシャーがあった。

それでも冷静なのが武田だ。「今日はタイミングを外すこと。自分のスイングをさせないように」と、クイックモーションを交ぜるなどオリックス打線を幻惑。2回2死満塁のピンチも得意の縦スライダーで山足を二ゴロに仕留めた。3点リードの8回2死一塁、好調な左の1番福田を迎えたところで交代。工藤監督が「武田はナイスピッチングだった。あそこ(流れ)を切るか切らないかが大事だと思った」と理由を説明したが、7回2/3を投げて無失点と先発の役割を果たし、今季1勝目を挙げた。

昨季はわずか4勝。終盤は「第2先発」という中継ぎだった。「先発復帰」への強い思いでキャンプインしたが、対外試合2試合、5回1/3で11失点。めった打ちを食らい候補から外される瀬戸際で、武田を救ったのが自宅の自作マウンドだった。

木製のマウンドでシャドーピッチング。「左手のバランスが崩れているのかな?」。昔のグラブを使った時にピンときた。キッチンに直行し、今のグラブとはかりで比べると、120グラムほど昔の方が重かった。次の日、福岡市内のスラッガー社の店舗へグラブを持って行き「重くしてください。622グラムで」と注文。グラブを1度バラバラにして指先にある綿を外し、代わりに革を張り、オイルを塗り込んで重くした。

重いグラブを使った3月13日巨人戦では2回無失点。打者9人で7奪三振。別人のような快投。「体が開くのがワンテンポ遅れて、よくなりました」と武田はニヤリ。21日楽天戦でも4回1失点で開幕ローテーション入りした。

「まだ投げられる体力はあった。次はまた長いイニングを投げたい」。昨季3完封した右腕は、次回以降の完投に意欲を見せた。開幕6戦を5勝1分け。6番目に武田が待ちかまえる充実の戦力で、このまま首位を突っ走る。【石橋隆雄】