日本のエースが、2020年東京五輪の決勝戦が行われる横浜スタジアムで快投した。巨人菅野智之投手(29)が、9回6安打2失点で今季初勝利。背番号「18」での初勝利をエースらしく、完投で飾った。8回無死から驚異の4者連続三振でギアを上げ、ラストボールの137球目にこの日最速タイの152キロで締めた。チームは開幕2戦目から6連勝で貯金は5。

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日本最高峰の対決に、誰もが息をのんだ。1点リードの9回無死、カウント1-1。菅野は筒香を直球で押し込んだ。150キロ、150キロで2-2。152キロ、152キロで懐を突き、フルカウントから外角148キロ速球で空を切らせ、8回無死から4者連続三振を決めた。「全神経を研ぎ澄ませた。眠っていたものを呼び起こせた」。2死後、この日最速タイの152キロで完投劇の幕を閉じた。

胸に「TOKYO」、背中にはエースナンバー「18」を背負って、マウンドに君臨した。1回に2本のソロで同点とされたが、中盤はパワーカーブで幻惑。目線を変え、終盤はウイニングショットのスライダーが生きた。イニングを追うごとにスピードも上げ、6回まで3球だった150キロ超えが、7回以降は16球。多彩な投球のバリエーションに、力勝負を加えた。

チームを去った先輩の思いを胸に、マウンドに上がる。東京ドームで使用するロッカーには、自らのネームプレートとともに西武に移籍した「UTSUMI」のプレートも隣に並んでいる。1月、ロッカー整理に訪れた内海が「僕の思いを智之に託したいなと思って」とこっそり置いたものだった。

その翌日、内海、長野の「送別会」が開かれた。「内海さんのロッカーの場所に変えてもいいですか?」と尋ねた。「もちろん」と快諾してもらって、プロ1年目からの感謝の思いも込めて「これ、受け取ってもらえますか」と首につけていた金のネックレスを外し、プレゼントした。

内海もそうだったように、言葉にもエースの覚悟を示した。ヒーローインタビューでは「今年も沢村賞を取って、優勝したいです」と力強く宣言した。その先には20年の東京五輪も見据える。決勝はこの日と同じ横浜スタジアムのマウンド。世界最高峰の投球で、自らの首に“金メダル”をかけてみせる。【久保賢吾】

 

巨人原監督(菅野に)「代える選択肢はなかった。見事に期待に応えてくれた。まだまだ余力というか、強さを感じる。若い投手も見習ってもらいたい」

巨人宮本投手総合コーチ(完投した菅野に)「監督、ベンチの思いを快く受け入れてくれた。智之さまさまですね。生きる教材がいるのだから、若い選手は背中を見て成長してほしい」