来日初の猛打賞で連敗ストップに導いた。日本ハム王柏融外野手(25)が打のヒーローになった。

5日、西武1回戦(東京ドーム)に「5番DH」でフル出場。2点リードの5回2死二塁で中前適時打。続く7回2死一、二塁では左越え適時二塁打で加点。3安打2打点に来日初の死球と大当たり。来日初盗塁のおまけも付いて、チームの連敗を「3」で止めた。

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右拳を突き上げ、ほえた。王柏融がポーカーフェースを崩し、燃え上がった。2点リードの5回2死二塁。見せ場はやってきた。2球目。内角高め直球143キロを振り切った。執念のこもった打球は、二塁手のグラブを抜けた。中前適時打だ。一塁ベースを駆け抜けると握った拳を掲げた。「しっかり芯に当てて、自分のスイングをしようと思った」。

1度、上昇したボルテージは簡単には下がらない。2死一塁。続く横尾の初球に、自らの判断で二盗を試みた。隙を突く絶好のタイミングだったこともあり、悠々と来日初盗塁に成功。台湾で16年に24盗塁の実績もあり、涼しい顔で、チャンスを広げた。死球も含め、全打席出塁の3打数3安打2打点の活躍。「本当に走者をかえしたかっただけ」と控えめに振り返った。

試合前練習は1人、ベンチ裏で別メニュー。栗山監督から「体を動かしてからのほうがいいと。世界で戦うことは、こういうこと」と勧められた。吹雪に見舞われた仙台の試合を受け、入念なストレッチに費やした。王柏融も「(寒さは)台湾では絶対、あり得ない」と苦笑い。指揮官の計らいを受け、期待に応えた。

日本流に願掛けした。3月下旬。遠征先の山梨・甲府市内にある武田神社を訪れた。戦国時代を代表する武将、武田信玄を祭っている。勝運だけではなく「自分自身に勝つ」などの御利益もあるとされ、両手を合わせて願った。開幕から前日4日まで6試合25打数5安打も、気持ちを切らさなかった。

「(日本の投手を)吸収すること。すごく慣れてきた感じがする」と手応えをつかんでいる。奮闘が実り、チームの連敗を「3」で止めた。国際試合で試合経験がある東京ドームで、初めてヒーローインタビューを受けた。「シーズンはまだ長いので、調子をしっかり整えたい」。謙虚で、貪欲に。「大王」の挑戦は、まだ始まったばかりだ。【田中彩友美】