エースが踏ん張った。日本ハム上沢直之投手(25)が粘投で、今季2勝目を飾った。試練に打ち勝った。

3点リードの7回。先頭に二塁打を許し、四球と乱れると、マウンドに木田投手チーフコーチが寄ってきた。「急にストライクが入らなくなった。本当に久しぶりに出たな、と」。交代はない。1死満塁にピンチを広げても、マウンドを任された。「逆転されたら、どこに帰ろうかな…」。自虐的な思いもよぎったが、最後にギアを上げた。

加藤を遊邪飛、続く中村は3球三振に切った。「遊んでる場合じゃないな」と渾身(こんしん)の1球、131キロのスライダーで空振りを奪った。「あそこで期待に応えないといけないと思った」。6四死球と乱れたが7回1失点。前回西武戦でも、2点リードの無死満塁を無失点に切り抜けた。今季から決め球をフォークに絞らず、直球やナックルカーブなど全球種で勝負。芽生えつつあるエースの覚悟を、勝負どころで体現した。

チームは福岡→札幌の移動試合で、通常の試合前練習はなし。上沢は遠征に同行せず、千葉・鎌ケ谷で調整した。「ブルペン陣がたくさん投げているような状態が続いている。7回で代わってしまったのも申し訳ない」と頭を下げた。本拠地・札幌ドームでカード初戦を取り、仕切り直しへムードを高めた。「エースの人だったら、今日の試合は投げきっている」。描くエース像へ、反省も糧にしていく。【田中彩友美】