やらないと思わせ、鮮やかに決めた。8回に捕逸で勝ち越し、なお1死三塁。田中が2ボールとなったところで、楽天平石洋介監督は今季初めてスクイズを敢行。

「整いましたね、状況が。(タイミングを)探っていたんですけど、いい流れがきた。ひるんでもしょうがない。(田中)和基を信頼して出した」。オープン戦中には、田中の右打席のバント練習のために自ら投手役を務めたこともあった。

やると思わせ、やらなかった直前の策が効いた。同点の1死三塁、渡辺直を代打に送った。指揮官と同い年、チーム屈指のバント技術を誇るベテランは「スクイズは頭になかった。9割5分、打ってかえすつもりだった。低めは捨てて、高めにきたらいこう、と」。したたかな用兵がソフトバンクの左腕、モイネロに重圧をかける。追い込まれながら死球をもぎ取り、チャンスを広げた。

千賀相手に7回で14三振を喫しながら、6四球を選ぶなど143球を投げさせた。「あれだけの真っすぐと変化球。絶対に割り切りが必要。とんでもない空振りをしてもしょうがない」。腹をくくって勝負し、本拠地では開幕から負けなしの4連勝。単独首位に浮上した。【亀山泰宏】