ヤクルト小川淳司監督(61)が球団史上3人目となる400勝を達成した。秋季キャンプ地の松山で、未来の大砲候補として期待をかける高卒2年目の村上宗隆内野手(19)が1回に勝ち越しの4号3ランを放ち白星を引き寄せた。初完投で2勝目を挙げた原樹理投手(25)を含め先発全員安打で、3戦連続の2ケタ安打をマークした。

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小川監督は完投した原から受け取ったウイニングボールを上着のポケットにそっとしまった。野村氏、若松氏に続く球団史上3人目の偉業を達成したが「俺はあんまり、いいんだよ。ボールも飾る所がないからね」と笑顔を見せた。10年の代行監督時代を含め、7シーズン目で到達した400勝。「自分の数字ではないから」と謙遜した。

監督に白星をプレゼントしたのは、将来のヤクルトを背負うであろう村上だった。2-2で迎えた1回2死一、三塁、阪神先発ガルシアの2球目142キロ内角の直球をとらえた。打球はヤクルトファンの待つ右翼席へ。プロ初の2戦連発となった。10代での連発は、球団史上初。監督とともに、歴史に名を刻んだ。「よかったです。(監督は)いつもチームをまとめてくださっていて、とても頼りになる。いつも優しいです」と節目の勝利に貢献できたことを喜んだ。

指揮官は「一流選手になる素質がある」と村上に期待する。この日も“燕のゴジラ”の1発を「勝負強い打撃だった。大きい本塁打だった」と評価した。実は12日からの巨人3連戦を区切りとし「起用の1つの方向性を出す」とスタメンを外す選択肢もあった。しかし村上は踏ん張り、小川監督も「菅野から2本(安打を)打って、(14日に)本塁打も。やっぱりすごい」と、この日の「7番・一塁」でのスタメン起用を決断した。

全体練習の合間に、様子を見ては選手に声をかけ、バント練習で散らばったボールを、自ら拾うこともある。「経験は大事だけど、それを人に言っても違う方向にいくことがある。理由がないとか、理不尽なことは、今の時代には合わない」がモットー。今季のNPB最年長監督ながら、考え方は柔軟だ。

現役と監督を含め2位から6位までは経験しているが、優勝はない。「選手が戦ってくれている、その積み重ねが勝利数。その数字より、勝っても優勝しなかったら意味がない」。まだ見ぬ景色が広がっているであろう頂点へ、選手とともに歩んでいく。【保坂恭子】