守護神不在の戦いを強いられた虎が、執念ドローだ。阪神はヤクルト5回戦(神宮)で延長12回の末に引き分けだったが、守護神ラファエル・ドリス投手(31)が体調不良のため不在だった。その中で8回に同点に追いつかれたものの、救援陣は9回以降再び0行進。リリーフ陣は19年の虎で要だけに、踏ん張った意味は決して小さくないはずだ。

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守護神が消えた。チームの緊急事態にブルペン陣が奮い立った。3時間53分の総力戦で今季初のドローゲーム。矢野監督は神宮の三塁側クラブハウスで「何回もピンチを作りながらも本当に投手が粘ってくれた。負けなくて助かった部分ももちろんある。本当に、投手陣が作ってくれた引き分け」と粘り腰を評価した。

8回、同点に追いつかれてからは強力なヤクルト打線の脅威にさらされ、防戦一方だった。最大の窮地は延長10回だ。4番手桑原が攻め立てられ、無死満塁の大ピンチを招く。絶体絶命だ。それでも、バレンティンを遊ゴロ併殺に仕留め、後続も断って難を逃れた。9回にも1死三塁のサヨナラ機に陥るが、広岡のスクイズ失敗、三塁走者の挟殺で命からがら踏ん張った。

一大事だった。試合中、三塁側ブルペンで明らかな異変があった。2-0でリードした終盤は必勝リレーの準備に入る。だが、ブルペンで肩を作るのは能見とジョンソンだけ。ドリスの姿がない。8回に2人が続々と登板後、ブルペンで投げ始めたのは守屋だった。守護神不在-。矢野監督は「今日は体調不良で投げられなかった。もともと使えない状況のなかで青柳もあそこまでしっかり投げてくれた」と事情を明かした。

勝ち展開の駒が1人足りない。通常なら8回先頭からジョンソンを積極投入できる局面でも温存せざるを得なかった。能見は1死を奪った後、慎重な責めが裏目に出る。2四球を与えて降板。継投したジョンソンも山田哲への初球変化球が抜けて頭部付近への死球…。1死満塁でバレンティンに同点2点打を浴び、なお得点圏に走者を許すが耐えた。

敗戦目前の徳俵まで追い込まれながら、7投手のリレーで何とか踏みとどまった。指揮官は「2点を取られた場面は俺は責めるようなことは何もない。投手は投げる姿勢を本当に今日もしっかり投げてくれた」と言い、続ける。「5回からノーヒットやったっけ。やっぱり、もう打つしかないでしょう」。停滞ムードを打破すべく、打線の奮起を求める。引き分けに持ち込んだ執念で、勢いを作りたい。【酒井俊作】