564日ぶりの歓喜に声が震えた。「涙が出そうです」。阪神岩田稔投手(35)が今季初先発で17年10月1日、巨人戦(東京ドーム)以来の白星。完投勝利は15年6月16日日本ハム戦(甲子園)以来、実に1402日ぶりだった。普段は冷静な男が、両手を突き上げてガッツポーズを連発。我を忘れて喜んだ。

必死に腕を振った。序盤こそボールが高めに浮く場面もあったが、27アウトのうち16個がゴロアウト。持ち味を存分に発揮した。中継ぎ6人を注ぎ込んだ延長12回引き分けから一夜。お疲れのリリーフ陣も助ける“救い投げ”に、矢野監督も「本当に助かりました。ファームで頑張ってくれていた選手ががんばってくれるのは、すごくうれしい」と最敬礼だ。

昨季はわずか6試合先発で0勝4敗、防御率3・23に終わった。昨年12月の契約更改では1200万円減の年俸3800万円でサインし、「正直、今年で終わると思っていた部分もあった。(戦力外の覚悟は)ありましたよ」と明かした。夏も冬も10歳近く年下の選手と鳴尾浜で汗を流す。くじけそうになる自分を奮い立たせてくれたのは、病と闘う子どもたちだ。

魂の118球を投げた岩田は自ら切り出した。「体もピンピンしてます。全然いける。中途半端では辞められない。1型の子どもたちが見ているんで」。あらためて自身と同じ1型糖尿病患者を投球で勇気づける覚悟を宣言。がむしゃらに、最後の最後まで戦い続ける。35歳ベテランの復活ショーが、矢野阪神にはずみをつけた。【桝井聡】

▼岩田の勝利は17年10月1日巨人戦以来、564日ぶり。完投勝利となると、15年6月16日の日本ハム戦以来、1402日ぶり。また岩田が4月までにシーズン初登板したのは、16年3月30日ヤクルト戦以来、3年ぶり。今年は通年で活躍できるか。