球界初の「ポリバレント・クローザー」が試合を締めた。

巨人中川皓太投手(25)が3点リードの9回から登板。2死一、三塁のピンチも冷静に後続を断ち、無失点で今季2セーブ目を挙げた。「ランナーを出しても、0点で終われたのは良かった」と淡々。東京ドームでの連敗を5で止め、同期入団の桜井にプロ初勝利をプレゼントした。

この日の出番も、原監督が「一番、強い場所」と表現する4番筒香からの9回だった。課題のリリーフ陣は沢村、アダメスらが勝ちパターンで計算が立ちはじめたが、指揮官は「流動的にいく」と守護神は固定せず。相手の打順、状況を見極めながら、9回の投手を決める中、中川だけはその試合の「強い場所」に限定される。

そのスタイルは、サッカー日本代表の元監督だったオシム氏が大事にした「ポリバレント」の表現が当てはまる。サッカー用語で、1試合の中でポジションを変化させ、対応できる選手を意味するが、8回でも9回でも、回またぎでも対応する中川にピッタリの言葉。この日は7回に10球で肩を作り、出番が9回に決まると、8回に立ち投げ5球でマウンドに向かった。

抜群の安定感が、役割を際立たせる。今季は18試合に登板し、19回をわずか1失点。18日の中日戦で今季初失点したが、開幕から16試合連続無失点を記録した。「今までは負け試合が大半だったので、何としても今の立場を守りたいです」と決意。「ポリバレント・クローザー」が終盤を安定させ、1ゲーム差で首位広島を迎える。【久保賢吾】

▽巨人宮本投手コーチ(中川の起用法に)「中川をメインに考えてるので、8回にクリーンアップだったらそこにぶつける。沢村も上がってきたばかりで、負担がかからないところで、という部分もあります」

◆ポリバレント(polyvalent) 本来は化学で「多価」を意味する。06~07年にサッカー日本代表を指揮したイビチャ・オシム監督が用いた言葉で、多様性のある日本人の特徴を生かし、必要に応じて複数のポジションをこなせる能力を持つ選手を重宝した。MF阿部はボランチだけでなくストッパーも務め、代名詞的な存在だった。18年ロシアW杯の代表メンバー選出時には、西野監督がMF中島の落選に「ポリバレントではなかった」と説明した。