“欲しがらず”偉業達成だ。DeNA今永昇太投手(25)が、5月最後の日を好投で締めくくった。ヤクルト打線を7回3安打無失点で圧倒し、リーグ単独トップの6勝目を手にした。5月までに6勝は、球団では14年井納以来、左腕に限れば、大洋時代の75年間柴以来44年ぶりの快挙となった。

   ◇   ◇   ◇

今永は雄平に3ボールとした。1点リードの7回2死一、二塁。連勝を願うDeNAファンの願いと勝利を欲するヤクルトファンの悲鳴のような声援が交錯する。一打出れば、同点の場面でもエースは冷静だった。「フォアボールとしても満塁」と腹をくくった。そこまで3球全てスライダーの勝負から一転。直球を続け、フルカウントに。「調子がいいからこそ、あえて丁寧に。いつもは強引にいくところ」と今度はスライダーで高めに誘い、空振り三振。ガッツポーズで球場を沸かした。

「調子がいい」の言葉通り、4回まで無安打の投球。三振も開幕戦以来の2桁となる11個を記録した。その上で、丁寧を心掛けた理由-。今永は「昨日の東の投球を見て、参考にしました」と5月30日の中日戦(ナゴヤドーム)に先発した東の投球映像を注視した。「東は調子があまり良くなかったと思う。その中で丁寧に直球、変化球の投げ分けをしていた。ボールにするところはして、無理にストライクを欲しがらないところ」を自身に投影した。

ブルペンから調子は良かった。その上で「謙遜心」を忘れなかった。「直球の走りも、変化球のキレも良かった。いつもはそういう時に力んでしまう。あえて、あえてですね。丁寧に」と“欲しがらず”に7回無失点の内容で、結果的にヤクルト打線を退け、勝利も手にした。

5月最後の日に、ハーラートップに躍り出た。5月までに6勝の数字は、球団の左腕では44年ぶりだ。ラミレス監督は「自分自身でリーグベストのピッチャーと認識している。それだけの自信がある」と安心して委ねる一方で、今永は控えめ。「まだまだ積み重ねていかなければいかないので、小さな1勝にしたい」と最後まで“欲しがらず”先を見据えた。【栗田尚樹】