涙の雪辱だ。慶大は高橋佑樹投手(4年=川越東)が早大に3安打完封勝ち。勝ち点4の2位で終えた。高橋佑は勝てば3連覇だった昨秋の早大3回戦に先発するも、1点リードの9回に逆転負け。今春の優勝は逃したが、悔しさを晴らした。

最後の打者を併殺で打ち取ると、高橋佑は両手を何度も上下して喜びを爆発させた。「去年の秋のこともある。今シーズン、僕の状態が不安定な中、大久保監督が使ってくれた。昨日、勝った木沢からは『頼みます』と言われて。大久保監督には感謝しか、ありません」と打ち明けた。

その監督からは、ベンチ前で力いっぱいハグされた。ベンチ裏に引き揚げると、座り込んで目頭を押さえた。その姿を見た大久保監督も目は真っ赤。「高橋が泣いてるからさ。年を取ると、涙腺が…。学生野球って、いいな。(高橋佑は)責任を感じていたと思う」と思いやった。

責任とは、昨秋の敗戦だ。早大3回戦に先発。8回を終え、4-3とリードしていたが、9回に2失点で逆転負け。あと1歩で3連覇を逃した。その時のスコアは、横浜のグラウンドに張り出されている。チーム全員が屈辱を忘れず、今春へ向け練習を積んできた。既に優勝は逃していたが、同じ相手、同じ3回戦、再びやられるわけにはいかなかった。「悔しい思いを持って、やってきました。何とか、ここで結果を出せて良かったです」。

伸びのある直球に縦割れのカーブ、スライダーを交え、打たせて取った。散発3安打で、付け入る隙を与えなかった。2日前の1回戦で本盗を許した滝沢は「絶対に塁に出さない」と、4打席全て内野ゴロ。「(本盗の場面が)テレビでも流れて。僕のせいで、滝沢を褒めるべきなんですが。今日は三塁にも行かせなかった」と、やり返した。

早慶戦に勝ち、今春を終えた。左腕エースは涙が乾いた目で「シーズンは、あと1回だけ。技術を上げていきたい」と、大学ラストシーズンを見据えた。【古川真弥】