広島野村祐輔投手(29)が11日、「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム戦で今季4勝目を狙う。札幌ドームでの交流戦は通算2試合に先発し、1勝0敗、防御率0・69。実はそのデータ以上に、勝ち星への手応えをつかんでいる。

根拠は5月28日ヤクルト戦の翌日に行ったブルペンでの投球練習。プロ8年目、163戦目の先発後に初めてトライした行動の意味とは…。16年最多勝右腕の決断に迫った。【取材・構成=村野森】

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5月29日午後4時、神宮。前日のヤクルト戦で4回途中6失点KOされた野村は、キャッチボールの後、奇妙な行動に出た。

三塁側ブルペンに入り、畝投手コーチを相手に顔中に汗を浮かべながら投球練習を繰り返した。本来はロング走中心のメニューを消化する日のはず。登板翌日の「禁断のブルペン入り」だった。

野村は「登板翌日にブルペンに入るのは、プロに入って初めてです」と説明した。つまり、プロ8年目、先発163戦目で初めてということ。1年目の12年から、ブルペンでフォームと状態を確認するのは登板間に1度だけ。登板2日前が原則だった。この後6月2日にも入っており、初めて中6日の登板間に2度ブルペンで投球練習をした。

野村が「禁断のブルペン入り」について「横振りだった腕の振りを縦振りにしました」と説明した。見た目にはわずかな変化かもしれないが「自分の中では思い切って変えたつもり。同じこと繰り返しちゃってるんでね。変えないと」。早期KOが重なり、危機感が募っていた。畝投手コーチは「重心が一塁側にずれていた」と解説する。横振りになるとシュートの変化は大きくなるが、他のボールのキレ、制球は落ちる。上からたたくイメージを覚えようと必死だった。

それを受けての6月4日西武戦は、守りのミスもあり6回で4失点したが「(投球は)よかった。5回以降はもっとよかった。もっと投げたかったくらい」。翌5日はブルペンに入らず「毎回やると疲れちゃう。キャッチボールで調整できました」と話した。禁断の選択から2戦目。いよいよ成果を発揮するときだ。

野村には信念がある。「現状維持は現状維持じゃない。相手も必死に研究してくる。常に進歩しないとプロでは勝てない」。札幌ドームでは過去の交流戦で2戦して1勝0敗、防御率0・69。勝利への確信を胸に、マウンドに上がる。【村野森】