矢野阪神が泥臭く連敗を6で止めた!

「日本生命セ・パ交流戦」の西武戦で同点の7回1死満塁、梅野隆太郎捕手(28)が押し出し死球をゲット。連敗地獄に悔しさをかみ締めていた選手会長が、体を張って決勝点をもぎ取った。今季6度目の勝利打点は糸井、大山らと並ぶリーグトップの勝負強さだ。巨人&広島の上位が敗れて首位に3・5差。さあ逆襲だ。

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ギュッと握った拳に勝負への執念が詰まっていた。勝負の分かれ目を迎えたのは同点の7回だ。無死満塁の絶好機でマルテが空振り三振の1死になり、梅野が打席に入る。1-2からの4球目だ。抜けた変化球が懐をかすめると、球審に猛アピール。押し出し死球をもぎ取ると、無心のガッツポーズだ。今季最長の連敗を「6」で止め、体を張った選手会長は振り返る。

「欲しかったもの。やっと、という感じです。相手も打つというところで、引けを取らないくらいチャンスをモノにできた。勝つのは久々。大きな1勝。『いつか、くるだろう』では(勝利は)来ないので、いい1勝だったと思います」

連敗の責任を一身に受け止めていた。引き分け1戦を挟んで6連敗。黒星が続く間も正捕手としてフル出場していた。司令塔として意地がある。1点リードに転じた8回は先頭山川だ。対決の分岐点は1-1からの3球目。藤川が得意とする内角高め速球を要求し、つり球で空を切らせた。最後も146キロ速球。パ・リーグ最多27本塁打の大砲に真っ向勝負を挑み、力でねじ伏せた。堂々たるリードで、勝利をたぐり寄せた。

「もともとのスタイルを引いてもよくないと思う。基本的に真っすぐで押していかないと。8回は正直一番苦しかったところ。きついところを抑えてくれた」

もう誰にも渡さない。正捕手を死守すべく、意地だけで、グラウンドに立ってきた。5月末のある日、実にさらりと言う。「もう、だいぶ、くっついているんですけどね。ちょっと白っぽくなっているんです」。開幕4戦目の4月2日巨人戦(東京ドーム)で左足薬指を骨折。それでも痛みを押して強行出場してきた。少し曲がった指は、この世界で生きる覚悟を固めている男の“勲章”だろう。

常にベストを尽くす。19日楽天戦は5打数無安打。延長10回に5点を失い、険しい表情で「粘り勝てていないので悔しい。やり返す気持ちで明日から臨むしかない」と話した。翌20日の同カードはバックスクリーン左に本塁打。連夜の意地で大型連敗を止め、再び貯金1に転じた。窮地でこそ光る底力。扇の要が踏ん張れるチームは強くなる。【酒井俊作】

▼梅野が今季6度目の勝利打点を挙げ、チームメートの糸井、大山らと並びセ・リーグ最多となった。なお交流戦に限っては6月4日ロッテ戦、12日ソフトバンク戦に続いて3度目で、これは12球団最多タイ(他にDeNA大和、ソフトバンク内川、オリックス・ロメロ)。

▼阪神が梅野の押し出し死球で決勝点を挙げた。これは15年7月31日ヤクルト戦でゴメスが8回2死満塁でロマンから死球を受けて以来、4年ぶり。