ソフトバンクが「日本生命セ・パ交流戦」で2年ぶり8度目の王者に輝いた。勝った方が頂点に立つという巨人との直接対決を制した。

先発和田毅投手(38)が左肩痛からの復帰3戦目で5回1失点。17年9月10日ロッテ戦以来、651日ぶりの1軍白星を挙げる投球で導いた。チームは賞金3000万円を手にした。

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もう痛みはない。和田は全力で腕を振り、81球を投げきった。5回はやや球が浮き始めたが、2死一塁で持ち味の低めいっぱい直球で坂本勇を三ゴロ。4回に浴びた岡本のソロ1発のみで試合を作った。2年ぶりに味わう勝利の味だ。「勝った方が交流戦優勝というシーン。自分の白(星)より、チームの勝ちの方が大きかった」。祝勝ムードで沸き上がる中で、記念のボールを手にし「泣く雰囲気じゃなかったでしょ。去年全く投げられなかったのが申し訳ないし、恥ずかしい思いの方が強い」と、冷静に、さわやかに笑った。

昨年は2月キャンプで肩を痛め、1軍登板なし。初めて痛める箇所で、リハビリの出口が見えなかった。それでも「リハビリをやめよう、諦めようと思ったことはなかった」。和田の情熱はトレーナーやスタッフも巻き込み、あらゆる治療法をみんなで探りながら、手を尽くした。

9月下旬。シーズン中の復帰を目指すことをやめ、血小板を使って組織の修復や再生を図るPRP療法を行った。そこから劇的に肩の状態が上向いた。だが和田の考えはこうだ。「本当はどれがきっかけになったのか、分からない。何かと何かの組み合わせが偶然、良かったのかもしれない。やったことの全てがなかったら、治っていなかったと思う。全てのことがあったから、今投げられていると思う」。関わってくれた全ての人。悩んできた時間。無駄なものはなかった。

今月5日中日戦で1軍復帰してからは、投球プレートを踏む位置を三塁側に移し、カットボールやツーシームを多投。肘を痛めたメジャー時代に近い配球だった。この日は違った。一塁側プレートを踏み「16年や17年に近いスタイルかな」。真っすぐは復帰後最速の145キロをマーク。代名詞だったチェンジアップもさえた。「今日みたいに、力勝負じゃないけど、真っすぐを生かせる配球をこれからもできれば」。中10日での調整中、状態が良くて取り入れた“理想のスタイル”だった。

交流戦歴代単独2位、現役トップの25勝目で、復活を高らかに告げた。ただ、次の目標がある。「(ファーム施設の)筑後にはまだ、一緒にリハビリしてきた若い子もいる。和田さんもああやって治ったんだって、励みにしてもらえるような活躍をしないと」。本当の復活劇はこれから。次はリーグV、日本一まで止まることなく走り続ける。【山本大地】

▼勝利投手の和田は17年9月10日ロッテ戦以来の白星で、交流戦は通算25勝目。交流戦勝利数は単独2位となり、最多の杉内(巨人)にあと1勝に迫った。和田は11年の交流戦優勝を決めた6月15日中日戦でも勝利投手になっており、交流戦の優勝を決めた試合で2勝は和田が初めて。