阪神藤浪晋太郎投手(25)が今季初登板初先発で、初勝利を逃した。

甲子園にため息が漏れた。2回、藤浪が先頭の京田に四球を与え、迎えた木下拓の打席だった。初球に投じた146キロ直球が内角高めに抜け、左肘上部を直撃。木下拓はその場にうずくまり、痛みに顔をゆがませた。4回1死一塁の第2打席でも、スライダーが高めに抜け再び木下拓の左肘を直撃。甲子園はまたも、どよめきに包まれた。

課題の制球難に、やはり苦しんだ。今季初の1軍マウンドで初回、先頭の平田にフルカウントから四球。2死を奪うもビシエド、阿部に連続四球を与え、2死満塁のピンチを招いた。「藤浪、がんばれー!」の声も飛び交うなか、最後は堂上を空振り三振に仕留めたが、球数は36球を要した。

「試合前のキャッチボールの時から大きな声援をいただいて、マウンドに上がる時も今まで浴びたこともないような声援でもり立てていただいたのに、そのファンの方々の期待に応えることができず、悔しい投球となりました」。5回に1点を失い、なおも1死一、二塁で降板。5回途中で8四死球を与えながらも、1失点に踏みとどまった。内角に力強い直球が決まる場面もあり、勝負どころで打ち取る粘り強さは見せた。

プロ入り後初めて開幕を2軍で迎えた。ここまで2軍戦で8試合に先発。1イニングのみの登板だった5月18日の広島戦(由宇)から徐々にイニング数を増やし、防御率1・88と安定した投球を続けた。計43イニングに登板し四死球も14個に抑えていた。

この日は、甲子園球場が誕生してちょうど95周年の節目の日。実は90周年だった14年8月1日も、先発は藤浪だった。当時は勝敗はつかなかったが、好投で記念日にチームを白星に導いた。大阪桐蔭時代に春夏連覇も果たし、プロ入り後は本拠地として何度も立った甲子園のマウンド。試合後に矢野監督は「いったん、抹消します。次のチャンスは晋太郎自身がつかむもの」と話した。2日に出場選手登録を抹消し、出直しを図る。思い出の聖地で、この日は完全復活とはならなかった。【磯綾乃】

▽中日木下拓(藤浪から2死球)「塁には出られるので。ただ痛いです。向こうも痛いと思いますが」

▽阪神梅野(藤浪の投球に)「ゲームとしては後ろのカバーもあって、こういうゲームになった。何とか粘って投げていたことによって、こういうゲームになったのは大きい。こういうマウンドで学ぶことはマイナスなことはないし、プラスになったんじゃないですか」

▽阪神福原投手コーチ(藤浪について)「粘ったかな、なんとかね。もともと球数を投げるピッチャーだと思いますし」

▼阪神藤浪が5回途中1失点で降板。6四球、2死球の計8四死球だった。藤浪の1試合7四死球以上は過去6度あり、最多は15年9月3日の広島戦(7回で9四球)と、17年4月4日のヤクルト戦(5回で8四球、1死球)の「9」。今回はそれに次ぐ多さとなった。