緒方監督のタクトがさえた。同点の7回無死一、二塁。代打磯村が3ボールからのバントをファウルにすると、続く5球目はエンドランに切り替えた。バントの構えからヒッティングして、高く弾んだ打球は三塁手の頭上を越えた。スタートを切っていた二塁走者曽根は一気に生還。勝ち越し点を奪い、さらに勢いづいた。バント安打から2本の適時打で突き放した。打者9人6安打で4得点。つなぎの攻撃とともに、優勝争いに広島が帰ってきた。

緒方監督 しっかり切り替わったサインの中で選手が動いてくれた。しっかりやってくれた。

中軸の安定が広島の復調を支えている。1番西川と4番鈴木の94年生まれコンビが後半戦をけん引。エンドランで勝ち越した直後、西川がバント安打でチャンスを広げ、1死満塁から鈴木が2点適時打で中押し点を奪った。後半戦の打率は西川が4割、鈴木も3割8分1厘で打線を活性化させている。

不振だった大砲にも復調気配だ。4回に同点弾を放ったのは7月まで打率1割台だった松山。巨人メルセデスの浮いた真っすぐを右中間スタンドに運んで流れを変えた。「前半戦、全然力になれなかったので、後半戦は僕がやらないといけない」。チーム浮上のキーマンと自負する松山が復調すれば、打線により厚みが増す。

新顔も出てきた。9回は代打の3年目坂倉のプロ初本塁打の3ランでダメ押し。中軸に復調選手と若手がかみ合い、4カード連続勝ち越し。巨人とは7月18日に今季最大12ゲーム差あったが、4ゲーム差にまで縮めた。緒方監督は「若い選手が多いだけに失敗もするだろうけど、結果が出れば自信にしてくれればいい。経験を積んで成長していってほしい」と相乗効果に期待する。敗戦と勝利、失敗と成功を繰り返しながら、緒方広島が浮上してきた。【前原淳】