阪神大山悠輔内野手(24)が悔しさを晴らす劇弾で、窮地に陥ったチームを救った。

糸井嘉男外野手(38)離脱を受け、大幅にオーダー変更が行われた中、大山も今季初めて4番を外れて6番に降格。2点を追う9回無死一、二塁で初のサヨナラ弾となる逆転サヨナラ3ランを放ってみせた。

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たまっていた鬱憤(うっぷん)も全て、この一打に込めた。6番大山が、2点を追う9回無死一、二塁でフランスアの2球目を振り抜いた。「入ってくれと思って走りました。本当にうれしいの一言です」。右翼スタンドに入る打球を見届けると、大山は右手を振り上げ、激しく両手をたたいた。笑みがはじけた。

19試合ぶりの今季12号は、プロ初のサヨナラ弾。「記憶にないので人生で初めてです」。矢野監督も劇的な1発に感無量だった。「実際4番を外した日にこういう結果を出してくれたというのは、何かあるんですかね。ドラマ的にね、こういう決め方をしてくれたのは、野球の面白いところだし、怖いところ」。

こみ上げるものを抑え、大山は自分の仕事に徹した。「もちろん悔しい気持ちはありましたけど、6番で試合に出てる以上はその打順でしっかりやるだけ」。前夜は4打数無安打。不振が続き、今季106試合目で初めて4番から6番に降格した。浜中打撃コーチから通達されると、大山は宣言したという。

「また取り返すつもりで頑張ります」。

4番を張ってきた意地は消えていなかった。

矢野監督は打順変更の意図を説明した。「総合的。チームが昨日(9日)いやな負け方をして、そのまま何もしないと流れが変わりにくいのかなというのと、そういうふうに自分が思うのであれば、大きくいろいろ変えるタイミングでもあるのかなというところで」。この日、左足首を痛めた糸井が今季初めて出場選手登録を抹消された。チーム唯一の3割打者が離脱するアクシデントも受け、この日は打順と守備位置を大幅に入れ替えていた。

今後の打順は? という問いに、矢野監督は「そんなもん、すぐ変えるか!」と一蹴。「今度は奪い取るべき立場になったのでね。悠輔(大山)もまた明日から前に向かっていけるような1本になったと思う」。指揮官は厳しくも優しく、未来の主砲に期待を込めた。

チームの窮地を救った一打。もちろん、厳しい状況に変わりはないが、大山は「1試合1試合頑張ります」。勝利を積み重ね、苦境を打破していくだけだ。【磯綾乃】

▽阪神浜中打撃コーチ(大山について)「悔しさは絶対にあるでしょうし、悔しさをバッティングで返した。彼の意地を見ました。もう1度(4番を)取り返す気持ちでやってほしい」

▼大山がプロ初のサヨナラ本塁打を放った。サヨナラ安打は、今季5月3日DeNA戦10回の二塁打に次ぎプロ2度目。このときは同点のケースで、逆転サヨナラ安打もプロ初。

▼阪神のサヨナラ勝ちは今季9試合目。サヨナラ本塁打は7月30日中日戦でのソラーテ以来4本目で、77年4本(ブリーデン2、ラインバック、大島忠一)以来42年ぶりで、球団最多タイとなった。