今季が5年契約最終年の阪神鳥谷敬内野手(38)が8月31日、巨人戦前に進退について初めて口を開いた。

同29日に球団から“引退勧告”を受けたことを認めた上で「タイガースのユニホームを着てやるのは今シーズンで最後になる」と表明。今後についても他球団での現役続行を目指すか、現役引退するかの2択になる方向性も明かした。

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5分間の即席会見を除けば、鳥谷は何一つ変わらない準備を続けた。午前中から走り込み、打ち込みを始め、午後から全体練習に参加。結局出番はなかったが、7回裏2死ではネクストバッターズサークルで黙々とタイミングを取った。その一挙手一投足が背番号1の思いを物語っていた。

午後3時20分。全体練習を終えると、自ら報道陣への対応の場を設定。落ち着いた表情で「引退してくれないか、と言われました」と切り出した。8月29日、球団から事実上の戦力外通告といえる“引退勧告”を受けた。逆転CSを目指す中、自身の進退に注目が集まる状況を懸念。仲間のため、ファンのため、本来なら語りづらいはずの今後についても口を開いた。

「このまま引退するのか、それとも他チームを探して現役を続行するのか。(現役続行を目指す場合は)他チームで(オファーが)なければそのまま終わる形になると思います。どちらを選択するにしても、タイガースのユニホームを着てやるのは今シーズンが最後になります」

前夜、愛車で甲子園球場を後にしようとした時、道路に列を成した大勢の虎党に感情を揺さぶられた。

「今まで以上にたくさんの方々が自分のタオルを広げてくれているのを見て…。ファンの皆さんに、自分はどういう形にしても今シーズンでタイガースのユニホームを脱ぐ、ということを伝えたいな、というのが(話そうと思った)一番の思いです」

素直な本音がこぼれ落ちた。

以前から強いこだわりを持っていた現役続行にこだわるのか。それとも現役引退を選ぶか。残された選択肢は2つしかない。熟考できる時間は決して長くないが、今は逆転CSを狙うチームの一員としての自覚が苦悩を上回る。

「CSに出れば優勝というチャンスも出てくる。そこを一番に考えて。自分自身がどうというよりは、しっかりチームに貢献できることを常に考えてやっていきます」

縦じまで最後まで全力を-。それが16年間支えてくれた全員への恩返しになると、信じる。【佐井陽介】