球団記録を抜かれた男が意地を見せた。阪神高山俊外野手(26)が決勝打となる先制2点適時打を放った。

思いを込めた一振りだった。0-0の3回1死満塁。この日、2度目となる満塁の好機で打席が巡ってきた。「2打席連続で満塁のチャンスをつぶしてしまってはベンチに帰れない。気持ちは入っていました」。初球から積極的にバットを出すと、DeNA先発大貫の低めフォークにうまく合わせた。打球は二塁手ソトの横を抜ける2点適時打。相手の失策の間に二塁に到達した背番号9は大きく喜ぶことなく、振り返ってバックスクリーンに流れる打席の映像をすぐさま見返した。

9回には左翼線に二塁打を放ってマルチ安打を記録。常々、「次の1本」にこだわってきた。「1本目(適時打)より、2本目出たことの方が大きいんじゃないですか」。正右翼手糸井の戦線離脱によって、スタメン出場の機会が増えた。アピールのチャンスをものにしようと、貪欲なプレーで存在感を示した。

この日、自らが持つ記録が後輩によって塗り替えられた。16年に高山が打ち立てた球団新人最多安打の136安打を近本が更新した。明大時代には東京6大学のリーグ通算安打記録を更新する131安打を記録。虎のバットマンとして刻んだ記録を後輩が超えていった。「勝った試合で(記録が出た)というのは良かった」と祝福するとともに、同じ外野手を争う新人へ闘志も燃やした。「ヒットを打つだけじゃないですけど、走攻守すべてで負けないように、頑張っていきます」。飽くなき向上心を胸に、高山がチームを逆転CSへと導く。【奥田隼人】