広島が6日、永川勝浩投手(38)の現役引退を発表した。23日に会見が行われる予定で、23日中日戦(マツダスタジアム)を引退試合とすることも発表された。

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「永川劇場」と呼ばれた時代があった。走者を出すと本拠地球場がざわつくこともあった。それでも長身右腕は広島のために身を粉にしてきた。06年には自己最多65試合に登板するなど05年から5年連続50試合登板を記録。当時を「きついと思ったことはない」と振り返る。188センチ、98キロの体格から感じさせるたくましさそのままだ。

ただ、意外な一面もある。大きな男から初めて「怖い」という言葉を聞いたのは、一昨年9月。前年から痛めていた左ひざの手術を目前に控えたときだった。「体にメスを入れるのが初めてで怖い。手術を失敗する夢を見て…眠れない」。手術とはいえ、切開は1センチ程度と聞く、クリーニング手術。リスクはほとんどない。それでも「怖いんよ」と照れながら笑うギャップに、こちらが笑ってしまうほどだった。

まだ、ある。引退とともに23日中日戦を引退試合とすることも併せて発表された。「(漫画『ドラゴンボール』キャラクター)シェンロンにお願いできるなら、引退試合をしたくない」と漏らしていた。理由を聞くと、また照れ笑いしながら答えた。

「99%、泣くから」。

プロ入りから抑えという過酷なポジションを任せられ、地元ファンにすらブーイングを浴びても涙しなかった「永川劇場」の終幕を、この目に焼き付けたい。【広島担当=前原淳】

◆永川勝浩(ながかわ・かつひろ)1980年(昭55)12月14日生まれ、広島県出身。広島新庄から亜大を経て、02年度ドラフト自由獲得枠で広島入団。1年目から救援投手として活躍し、25セーブをマーク。07年からは3年連続で30セーブ以上を挙げた。通算165セーブは球団記録。188センチ、98キロ。右投げ右打ち。