就任1年目の巨人宮本和知投手総合コーチ(55)は、自らを「パートナー」と称した。マウンドから戻り、ベンチに座った投手の横に、ぴったりと寄り添い言葉をかけ続けた。「僕は『総合コーチ』なんていらない。冗談を加えながら、心の中にそっと入っていきたい」。

好投時には笑顔で脱帽し、結果が出なかった時は真剣な表情で改善策を伝えた。タレント時代に培った観察力、話術が役立った。「技術的なことは何もやってないよ。気持ちよくマウンドに向かわせるのが仕事」。メンタルケアに徹した。

21年ぶりの現場復帰。「コーチは長くやる仕事じゃないね。こちらで選手を勝手に格付けしてしまうから」との発見があった。先入観にとらわれず、フラットな目で選手の力を見極めた。昨季1軍登板なしの桜井が6月に中継ぎから先発転向し、ローテに定着。昨季1セーブの中川が夏場まで守護神を担い、先発の大竹、田口が救援に転向しフル回転。的確な役割を与え、秘めた能力を開花させた。

犠牲もあった。極度の緊張とストレスから口元にヘルペスを発症。持病の腰痛も悪化し座薬を使用。試合中に立てなくなったこともあった。それでも任務完了まで立ち止まれない。「海に1日も行けなかったよ! いつの間にか夏が終わってた。でもそれでいい。休むと自分がダメになりそうだから」と笑った。

苦しい状況も笑いに変える。宮本節が投手陣に和をもたらした。【桑原幹久】