巨人が、17日に行われるドラフト会議で星稜(石川)奥川恭伸投手(3年)を1位指名の筆頭候補に挙げていることが4日、分かった。東京・大手町の球団事務所でスカウト会議を開き、候補選手の絞り込み作業を行った。1位候補に当たるA評価は計8人。大船渡(岩手)佐々木朗希投手(3年)もトップランクに位置付ける中、奥川に対しては「将来性」と「即戦力」の両面で高く評価する。直前まで情勢を見極めながら、16日に最終決断を下す。

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先発投手の補強を目指す巨人のドラフト戦略の中で、奥川の評価が急上昇してきた。約2時間のスカウト会議を終えた長谷川スカウト部長は、1位候補は8人とした上で「佐々木君、奥川君、(明大)森下君はA評価の中でも上です」と説明。3人の評価順は明言しなかったが「私の中では決めている」と、1位決定は最終段階に入っていることをうかがわせた。

奥川は18年春から4季連続で甲子園に出場。今夏の甲子園は準優勝に輝き、8月末に韓国で行われたU18W杯では、カナダ戦で7回18三振を奪った。最速158キロの直球と落差の大きなスライダーを軸に、大舞台で圧倒的なポテンシャルを発揮。巨人は同W杯に長谷川スカウト部長らを派遣し、佐々木とともに密着マークを続けてきた。

将来性が抜き出ている最速163キロ右腕の佐々木か、高い投球術も併せ持つ奥川か。巨人は佐々木の潜在能力を最大限に評価する一方で、奥川に対しては将来性に加え、高卒ながら即戦力に近い力量があると高く評価している。今季巨人の先発投手陣で規定投球回に到達したのは15勝の山口1人。腰痛で離脱した菅野が11勝を挙げたが、桜井が8勝、ルーキー高橋が5勝と2ケタ勝利には届いていない。年間を通した先発ローテーションは確立できず、リーグ連覇を目指す来季に向けて「即戦力投手」は補強ポイントにも合致する。

星稜から直接巨人入りすれば、92年の松井秀喜氏以来、27年ぶり。3日には長谷川スカウト部長が同校をを訪れ面談を行った。「ものすごく指が長くてびっくりした。日本人の中でも突出しているんじゃないかな」と新たな魅力を感じ取った。佐々木とは7日に面談予定で、ドラフト直前まで最速163キロ右腕の動向もマークしながら情勢を見極めていく。原監督が参加する16日の次回会議で1位を最終決定する方針で、競合必至の奥川指名に踏み切る可能性は高まっている。

○…長谷川スカウト部長は2日に創志学園(岡山)西とも面談した。「首がすごく太いし下半身しっかりしている。バッターに向かっていく姿勢とか、一番監督が好きなタイプじゃない」と評価。東邦(愛知)石川、桐蔭学園(神奈川)森については「金属と木のバットであまり感覚のズレがない」と評し、捕手では東海大・海野をAランクにリストアップ。「(阿部)慎之助が引退することになった。捕ってからの速さとか実戦向き」と期待した。

◆巨人のドラフト1位 高校生投手の1位は11年松本竜也(英明)以来出ていないが、松本は日本ハムとの競合抽選で敗れた菅野智之(東海大)の外れ1位。高校、大学、社会人の一括ドラフトで入札1回目から高校生投手を指名すれば、01年寺原隼人(日南学園=抽選4球団でダイエー入団)以来となる。巨人は3球団以上が競合した1位(1巡目)の抽選に95年福留孝介(PL学園)から12連敗中。原監督の抽選は昨年外した根尾昂(大阪桐蔭)辰己涼介(立命大)ら通算1勝8敗となっており、くじ引きの不運が続いている。

◆奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ)2001年(平13)4月16日、石川県生まれ。宇ノ気小3年から宇ノ気ブルーサンダーで野球を始め、宇ノ気中では軟式野球部。星稜では1年春からベンチ入り。昨春から4季連続で甲子園出場し、今夏は準優勝。183センチ、84キロ。右投げ右打ち。