今夏の甲子園準優勝投手、星稜・奥川恭伸投手の交渉権はヤクルトが獲得した。注目右腕には3球団が1位入札。ヤクルトが引き当てた。

小さい頃からの夢をかなえた。石川県で生まれ育ったやんちゃな野球少年。7歳上の兄の背中を追いかけた。中学時代は兄がくれる「本塁打賞」のわずかなお小遣いが楽しみだった。

成長を支えたのは今も昔も変わらない負けず嫌いなハートだ。2年夏の甲子園。3回戦の済美戦で先発したが足をつり、4回途中で降板。チームも延長戦で敗れ、涙にくれた。「2度とあんな思いはしたくない」と体力作りに没頭。自分ととことん向き合ってレベルアップしてきた。

圧倒的な実績を残して、ドラフト1位をつかんだ。今春のセンバツ1回戦は夏の王者履正社から17奪三振で3安打完封。ラストサマーは智弁和歌山戦の延長14回、23奪三振での1失点完投もやってのけた。U18W杯のカナダ戦は本調子でないにもかかわらず、7回18奪三振。大会ベストナインに輝いた。メジャースカウトの目も釘付けにした。

どんなに好投をしても反省点を探し、現状に満足はしない。謙虚な心と向上心。名前の通り、うやうやしく、伸びてきた。プロの世界に飛び込んでもそれは変わらないはずだ。

▽星稜・奥川の話 自分自身、住んでいるところがすごく田舎なので、都会の生活にも慣れていかないといけないかなと思います。どこに行っても頑張っていこうと決めていたので、こうして縁があって東京ヤクルトスワローズさんに決まったわけなんで、そこで活躍出来るように精進していきたいと思います。一番は勝てる投手を目指して、チームのエースになれるような選手になりたい。

▽ヤクルト高津監督の話 どうしても投手を強くしたいと言った手前、絶対に引いてやろうと思っていました。ヤクルトのエースはもちろん、日本を代表する投手になると思います。2日前に公言したときから、ヤクルトのユニホームを着て神宮球場で投げる姿を想像していました。一緒に頑張りましょう。

▽星稜・山下智茂総監督 (奥川について)プロはそんなに甘くない。キャンプまでが大きな課題。走れ、走れ、と言っているよ。(ヤクルトは)投手を育てるのがうまい。高津監督も投手なだけに、良かったなと思います。

▽ヤクルト山田哲の話 (奥川について)コントロールがいいし、まっすぐが速い。完成されている投手だと思う。

◆奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ)2001年(平13)4月16日生まれ、石川県出身。小2年から宇ノ気ブルーサンダーで野球を始め、宇ノ気中では軟式野球で全国優勝。星稜では1年春からベンチ入りし、4季連続の甲子園出場を果たした。好きな言葉は「置かれた場所で咲きなさい」。趣味は釣り。家族は両親と兄。50メートル6秒5。遠投100メートル。胸囲90センチ。握力は左右ともに65キロ。183センチ、84キロ。右投げ右打ち。