日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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阪神は揚塩球団社長、矢野監督らがオーナー報告を終え、シーズンのケジメをつけた。藤原オーナーも「巨人」を口にするほどで巻き返しに向けた方針を明確にした形だ。

開幕前から下馬評は低かったし、阪神に近い評論家を除いてはBクラス予想が大勢だった。終盤の駆け込み3位は現実だが、シーズンを通してみるとそれが地力とは言えない戦いぶりだった。

本来は今シーズンも金本監督で、矢野監督はヘッドコーチで体制を支える役割のはずだった。しかし「あと2年」の契約年限を残しながら、阪神は電鉄本社の強い意向で、金本監督解任に踏み切った。

もともとが電撃就任どころか、本社、球団のお粗末な交代劇に巻き込まれての矢野監督の就任だったのだ。ドタバタで気の毒な矢野監督誕生は、1年目シーズンはある意味、猶予期間だったことを示していた。

矢野監督はシーズン中の敗戦で何度も「責任」という言葉を使った。むしろチーム作りの方針がぶれた本社、球団フロントに責任があった。矢野監督にとっては2年目こそが勝負の年だ。

チーム補強の初手となったドラフトは上位5人が高校生で「育成」に重点が置かれた。揚塩社長は「金本監督のときから軸になる選手は自前で育てたいという方針は変わらない」と生え抜きを主力に育てる必要性を説いた。

それを実現するには、現場コーチ、スタッフの指導力は当然、それをつぶさに点検するフロントの能力も問われる。1、2軍ともそこの人材が乏しく、的確な配置でないと、チームは雪崩のように崩壊する。

チーム強化のキーになる外国人獲得の成否はさらに注視される。最高責任者の藤原オーナーは「フロントも頑張っていかないと」と語った。矢野監督に勝ちが求められる来シーズン、フロントの真価が問われる。