阪神が来季、15年ぶりの優勝を果たすための克服課題を日刊スポーツ評論家陣が「猛虎再建論」と題し、リレー形式で提言しています。第6回は近鉄での現役時代に4度の盗塁王に輝いた元オリックス監督の大石大二郎氏(61=現社会人ジェイプロジェクト監督)です。投手力、守備力、攻撃力の3部門全ての強化が不可欠と分析し、具体策を挙げて解説します。【取材・構成=松井清員】

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★投手力強化 阪神は12球団NO・1の防御率3・46が示す通り、投手力が抜群です。優勝争い参戦にはこの長所をさらに強化することが重要です。1つは、昨年活躍したのに今年戦力になれなかった投手。たとえば秋山、小野、桑原、才木らは何が問題だったのか。1人でも昨年並の働きをしていれば、チームももっと上位にいけたはず。今年良くても来年活躍できない投手が出てくることが予想されるので、原因究明と対策が大切です。

メッセンジャーが引退した今、先発期待の柱は西でしょう。ただ防御率は2・92ながら、10勝8敗で貯金を2個しか作れなかった。要因の1つに、先制点を与えた試合が先発26度中、19度もあったことが考えられます。攻撃の得点力が低いだけに、先に点を与えると後手後手に回る。絶対に味方が点を取ってくれるまで点を与えない、強い気持ちが大切です。エース格は最低でも5~7個以上の貯金が欲しい。たとえば15勝なら8敗までの覚悟で臨み、西が投げれば必ず勝つムードを作ることが大切です。

★守備力強化 102失策したディフェンス強化も不可欠です。記録に残らないものも含めると、内野も外野もかなり投手陣の足を引っ張った。チーム全体の傾向として、体の横で捕る選手が多い。横は不安定なので、後ろにそらす確率が高くなる。打球の正面、両手が基本です。加えて、もっと広い守備範囲が欲しいです。総じて全体的に1歩目が遅い。1歩目が俊敏かどうかで内野も外野も数メートル、守備範囲が広がります。うまくなる近道は、実戦的な守備練習で鍛えること。ノッカーの打球ではなく、打者のフリー打撃やティー打撃の打球を受ける練習です。送球も捕球も、練習すればするほど精度が高まる。守りが安定すればより自慢の投手力が生き、勝つ確率が上がります。

★攻撃力強化 得点力アップは当然です。特に外国人、ホームラン打者の獲得は是非もので、35~40本打てる4番が欲しいですね。1人そういう打者がいると、福留や糸井もより生きる。大山や近本、梅野、糸原らも今年は頑張った成績だと思いますよ。ただ、打線に核がないから自分が返さないといけないとか、大きいのを狙う必要に迫られたり、役割が変わってみんな打率を下げた。強力な外国人がいれば、個々が持ち味を発揮できる役割に戻れて、いい打線が組めると思います。加えて、バントや右打ちなど、ここ一番でできなかったことも多いので、精度を上げたい。本番で結果を出せるように練習から追い込むことが重要です。