135球の熱投は、報われなかった。日本ハムからドラフト1位で指名された社会人NO・1左腕、JFE西日本の河野竜生投手は、三塁側応援席に深々と一礼すると、口を真一文字に結んでチームメートの肩を抱いた。

8回途中を7安打1失点。「自信のある直球を跳ね返されてしまった。チームを勝利に導けなかったのは悔しい」。涙は、なかった。

マウンドを踏んで、わずか4球で先制の1点を失った。1回2死走者なしから、中軸に連続長短打を許した。初球から振ってくる相手に対し「もうひとつコースが甘く、制球が良くなかった」。カーブをすくわれ、高めの直球を痛打された。それでも、試合を作れる賢さとハートの強さが真骨頂。ピンチでも、ボールが先行しても、要所での制球を間違えない。2回表に味方が追いついて以降、走者を背負っても踏ん張った。

17日のドラフト会議から9日。この日の最速は145キロ止まりだった。目まぐるしい1週間に調整の時間は限られたが、言い訳は一切なし。「高校時代に比べて体力もついたし、精神力が一番成長した」。社会人野球で過ごした3年は、強靱(きょうじん)なメンタルにつながった。プロで活躍するために、課題は「制球力」と即答。先発でも、中継ぎでも、新たなステージで任された役割をまっとうする覚悟だが「ずっと先発でやってきたので、プロでも先発をしたい」と、目指す姿はある。徳島・鳴門高時代から、6年連続で全国の舞台を踏んだ経験値を引っさげて、先発左腕不足にあえぐ日本ハムの救世主となれるか。【中島宙恵】