侍ジャパン稲葉篤紀監督(47)が東京五輪に向け、新戦力を発掘する。

10年ぶりの世界一となるプレミア12初優勝から一夜明けた18日、都内で取材に応じた。西武秋山、広島菊池涼に続き、巨人山口のメジャー挑戦が表面化。実現した場合は来年8月の五輪出場は極めて難しくなり、センターラインの見直しは急務となる。今大会で唯一のルーキーながら勝利の方程式の一角に入ったソフトバンク甲斐野を例に、来季前半戦で未招集の新戦力に目を光らせる。

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世界一の達成感と、下戸の指揮官がシャンパンファイトで浴びた美酒の余韻はなかなか消えない。だが、チームの根幹に関わる一報も稲葉監督の耳に入っていた。決勝の韓国戦で先発も1回で交代した山口を「全力でやった結果。ありがとうという言葉しか出ない。こういう経験から彼は必ず成長してくれると信じている」とフォローしながら「なんか米国に…という話も聞いている。夢はみんな持っている。全力で応援したい」とメジャー挑戦の話題に自ら触れた。

長らく侍ジャパンでレギュラーを張った秋山、菊池涼もメジャーに挑む意向。山口は今大会でチーム最多の3度の先発を果たした。だが、東京五輪には不在の公算が大きい。「これだけのメンバーがいる。今回も誰をどう使っていくか、いい悩みの中でやってこれた。五輪に出場できない選手がいるのであれば、それ以外のメンバーで行く必要がある」と覚悟を見せた。

未知の人材がいると信じている。「もちろん今回の選手を土台に」と前置きし「来年の調子も含めて、いろんなことがあると思う。今回も甲斐野がルーキーであれだけの活躍をしてくれた。そういう選手が出てくれば当然、考える必要もある」と話した。就任2年で試行錯誤を繰り返してきた候補のパイは、ほぼ固まっている。だが甲斐野のようにルーキーで未招集ながら、重要戦力となるケースを目の当たりにした。

今季2年目の阪神高橋遥は抜群の直球の球威を誇り、常に熱視線を送ってきた。来季は未完ながら163キロの怪物右腕でロッテのドラフト1位佐々木朗希、完成度の高いヤクルト1位奥川恭伸、広島1位森下暢仁がプロの世界に飛び込む。可能性は常に存在する。

悲願の金メダルへ、もうリスタートした。「韓国もこの悔しさを持って来るし、メキシコも必ず我々を倒しに来ると思う。我々もしっかりとした準備をしていけるように、また今日からやっていきます」。黄金のロードを舗装していく。【広重竜太郎】